高齢者にとって、誤嚥性肺炎などの気道感染は死に直結しており、助かった場合でも感染が原因で要介護状態の寝たきりになることもある。したがって、その予防はきわめて重要であり、多くの施設でクロルヘキシジンなどが配合された抗菌剤を使った口腔ケアが行われているが、副作用があり長期使用は好ましくない。当研究は従来の抗菌剤に替わる抗菌性を持つ唾液ムチンに着目し、抗菌性が強く発揮できる唾液ムチン分子修飾パターンを同定し、誤嚥性肺炎予防のためのデンタルケア強化に応用する。本研究では、ヒトから採取したサンプルを対象に分析をしてきたが、平成28年度は、ヒトに替わる実験動物としてマーモセットの有用性の検証を行った。マーモセットは遺伝子的な観点でヒトに最も近い霊長類であり、ヒトと同じ数の歯を保有する。 マーモセット8匹(メス4匹、オス4匹)、ヒト8名(女性4名、男性4名)を対象とした。口腔内診査、およびプラークの採取を行った。マーモセットのプラーク採取においては、滅菌した綿棒を用いて、歯の表面をぬぐい、滅菌水1mLを分注した滅菌チューブで懸濁した。ヒトについては、安静時唾液を用いた。採取したマーモセットのプラーク懸濁液、およびヒトの唾液は180μLずつ、5本のチューブに分注後、ただちに-80度で保存した。サンプルは凍結乾燥処理後、サンプルに含まれるDNA抽出し、16S rRNA領域を増幅したPCR産物を対象に、次世代シーケンサーを用いて塩基配列を取得した。得られた配列を用いて16S rRNAデータベースに対する相同性検索および系統分類解析を実施し、対象サンプル中にどのような微生物がどれくらい存在しているか細菌叢解析を行った。その結果、ヒトとマーモセットで共通して存在する口腔内細菌の存在が認められた。
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