医療が目覚しく進歩した現代社会においても、循環器疾患は悪性疾患と並んで我が国の主要な死因となっており、また死亡には至らないまでも心不全の発症により生活の質を維持できない症例も数多い。一方で、歯周病等の口腔衛生状態と虚血性心疾患等の循環器疾患との関連が報告されて久しい。我が国では8020(ハチマル・ニイマル)運動が行われており、また21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)においても口腔衛生の重要性が指摘されてきた。本研究では、口腔衛生の詳細な評価と生命予後、心不全、虚血性心疾患等の心血管関連入院との関連を検討した。 対象は2013年から2015年までに大阪大学医学部附属病院歯科治療室を受診した20歳以上の症例とした。観察項目として、歯科治療室を受診時の診療記録により、歯数、歯の動揺、歯肉出血等の口腔衛生状態を詳細に調査した。さらに、大阪大学医学部附属病院における診療記録より患者基本情報、既往歴、臨床所見、検査結果、投薬内容、予後情報等の観察項目について調査を行った。方法として、口腔衛生状態と生命予後および心血管関連入院との関連について検討した。 本研究の結果としては、口腔衛生状態と生命予後には明らかな関連を認めず、また歯数と心血管関連入院とは明らかな関連を認めなかったが、歯の動揺および歯肉出血と心血管関連入院との関連が示唆された。これらの結果から、口腔衛生状態の適切な管理が循環器疾患の管理に重要であることが示唆された。
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