研究課題/領域番号 |
25463250
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
弘中 美貴子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (70615286)
|
研究分担者 |
嶋崎 義浩 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (10291519)
古田 美智子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20509591)
竹内 研時 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10712680)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 社会的決定要因 / う蝕 / 地域環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、乳幼児う蝕などに代表される口腔の疾患を対象に、個人の保健行動だけではなく、地域の保健環境を把握した解析を行なうことで、地域の特性が個人に与える影響を検討し、今後、地域環境への介入を進める上での基礎資料を得ることを目的としている。 乳幼児のう蝕を減少させる対策として、地域の実情にあわせて各自治体が独自の対策を実施している。熊本県の隣県である宮崎県の宮崎市では、幼児歯科保健事業として平成10年より宮崎市歯科医師会会員の歯科医院で2歳から3歳までの1年間に計3回のフッ化物歯面塗布を行っている。平成14年に掲げた「健康みやざき市民プラン」の中で、平成24年までに「むし歯のない3歳児の割合を70%以上にする」という目標を掲げていたが、フッ化物歯面塗布事業の効果もあり、平成18年度の中間値が71.3%と目標値に達した このように、地域の自治体が主体となって実施するう蝕予防事業により、乳幼児のう蝕を効果的に予防し、う蝕の増加を抑制できることが集団データとして確認できるが、う蝕予防事業の効果を地域全体としてだけではなく、個々の乳幼児の生活習慣や保護者の意識等の個人レベルの因子を考慮して、う蝕の増加リスクやう蝕抑制に対する事業の効果を検討することは、事業内容の見直しや口腔保健指導を行ううえでも有意義である。そこで、宮崎市のデータをもとに1歳6か月児健診時から3歳児健診時までのdmf歯の増加に対するフッ化物歯面塗布のう蝕予防効果を多重ロジスティック回帰分析により検討した。その結果、フッ化物歯面塗布を受けた回数が増えるほどう蝕の増加リスクが低く、フッ化物歯面塗布が乳歯齲蝕の抑制に効果的に働いていることが示唆された。また、未卒乳、間食習慣や口腔清掃状態が乳歯齲蝕の増加に影響していたことから、う蝕の抑制には口腔保健指導の徹底が重要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、宮崎市において行われているフッ化物歯面塗布事業の効果を検討するために、1歳6か月児から3歳児までのう蝕の増加に及ぼす影響について、フッ化物歯面塗布回数およびう蝕に関連すると思われる要因を併せて分析を行い、フッ化物歯面塗布によるう蝕予防効果及び個人のう蝕関連リスク要因の検討を行った。その結果、フッ化物歯面塗布を受けた回数が増えるほどう蝕の増加が少なく、地域事業として実施されているフッ化物歯面塗布が乳歯齲蝕の増加に対して抑制的に働いていることをことを明らかにした。また、個人のう蝕リスク要因として、卒乳未完了の者、間食習慣が多い者や口腔清掃状態が悪い者において乳歯齲蝕が増加することを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度に分析を行った宮崎市のデータを用いて継続して分析を行い、1歳6か月の時点でう蝕を持つ者と持たない者に分けて、それぞれの群におけるフッ化物歯面塗布のう蝕予防効果を明らかにしていく予定である。その際、個人の持つう蝕増加リスク要因の影響を併せて分析を行うのに加えて、地域に関する要因を加味して検討を行いたいと考えている。また、他地域における児童のう蝕に関わる個人および地域に関する要因について検討するために、学校区単位のう蝕データ、地域の歯科医院数、歯科医師・歯科衛生士数、公民館数などの地域特性を収集し、それらの要素が児童のう蝕と関連があるのかについて検討を行い、う蝕を多く持つ児童が住む地域におけるう蝕予防対策を検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は乳幼児のう蝕に対するフッ化物歯面塗布事業およびう蝕リスク要因についての検討を行ったが、う蝕の地域特性との関連性を十分に検討しておらず、当初の計画と異なっているため当該助成金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
う蝕に関連する地域特性の影響を検討するにあたり、情報収集やデータ解析を行う際に必要な物品および旅費などに助成金を使用する予定である。
|