研究課題/領域番号 |
25463251
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 幸江 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30274476)
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研究分担者 |
山下 喜久 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20192403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Streptococcus mutans / フッ化物耐性 / eriC-F遺伝子 |
研究実績の概要 |
今年度はまず、S. mutans UA159株、eriC-F-a変異株、eriC-F-b変異株およびeriC-F-a/eriC-F-b二重変異株について、温度、pH、浸透圧、バシトラシン濃度などさまざまな環境要因の変化に対する応答を野生株と比較した。44℃、pH 5.5、0.5 M NaCl、5Uバシトラシン濃度の環境下でUA159野生株と3種類の変異株を生育したところ、何れの変異株も野生株と同じように生育し、eriC-F-a遺伝子もeriC-F-b遺伝子も共に上記のような環境ストレスへの応答に関与していないことが明らかになった。次に、S. mutansに比べてフッ化物耐性が非常に強かったStreptococcus anginosusのフッ化物耐性に関与する遺伝子を特定し、eriC-F-b遺伝子との比較を試みた。全塩基配列が公表されているS. anginosus C1051のゲノムデータを用いて、フッ化物耐性に関与するeriC-FやcrcBに相同する遺伝子を検索したところ、2つの遺伝子 (SAIN_RS03905と SAIN_RS04765) の存在が明らかになった。形質転換が可能なS. anginosus NCTC10707株を用いて、SAIN_RS03905変異株およびSAIN_RS04765株を作製し、フッ化物耐性実験を行った結果、SAIN_RS03905変異株のみがフッ化物耐性を消失した。そこで、NCTC10707株のSAIN_RS03905相当遺伝子の塩基配列を決定したところ、405個のアミノ酸からなり、S. mutans eriC-F-b(406 aa)と62%の相同性を示すことがわかった。本遺伝子をsa-eriCA遺伝子と名付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S. mutans eriC-F-b遺伝子の上流領域に存在するリボスイッチの解析には至っていないが、S. mutansよりもフッ化物耐性の強いS. anginosusのフッ化物耐性関与遺伝子を同定し、S. mutans eriC-F-b遺伝子との比較を行った。口腔連鎖球菌のフッ化物耐性関与遺伝子の構造比較が可能となり、フッ化物耐性能との関連解明に繋がると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、S. mutansにおいてeriC-F-b遺伝子がフッ化物耐性に関与していることを明らかにするために、昨年度に作製したeriC-F-b変異株にシャトルベクターを用いてeriC-F-b遺伝子を導入する相補実験を行う。次に、S. anginosus sa-eriCA遺伝子をシャトルベクターを用いてS. mutans eriC-F-b変異株に導入し、S. mutansの中でSa-eriCAを発現させる。得られた変異株のフッ化物耐性を測定し、S. mutans野生株と比較することにより、S. mutansとS. anginosusのフッ化物耐性の違いが両菌に存在するフッ化物耐性遺伝子の違いによるものなのか、あるいはフッ化物耐性遺伝子の発現に及ぼす因子がそれぞれの菌で異なるのかを明らかにする。さらに、S. mutansのフッ化物耐性関与因子(SMU_1289)に対するペプチド抗体を作製し、フッ化物添加あるいは無添加培地で生育した場合にSMU_1289タンパクの発現に違いがあるかどうかを調べるために、ウエスタンブロット分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に計画していたS. mutansのフッ化物耐性関与因子に対する抗体の作製を実施することができなかったため、助成金の次年度への持ち越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は持ち越した助成金を考慮し、フッ化物の存在がS. mutansのフッ化物耐性関与因子(SMU_1289)の発現を増加するか否かを明らかにするため、本タンパクに対するペプチド抗体を作製する予定である。
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