研究課題
生体側の因子である口腔粘膜の客観的評価方法については、臨床応用できる方法はみられない。とくに、高齢者に多くみられる舌乳頭の萎縮状態については、従来から平滑舌として臨床的に分類されているが、臨床医の経験や観察力によるところが大きく、必ずしも客観的な観察法とは言えない状況であり、舌粘膜の萎縮度を客観的に評価した研究はみられなかった。そこで本研究では、口腔粘膜の一部として全身状態の程度と関連するとされている舌乳頭の萎縮度に着目して、これを客観的に評価する方法について検討した。今年度は、高齢者における舌粘膜の萎縮状態を臨床的に3段階に分類し、発現頻度について解析した。その結果、140名の高齢者のうち、12.1%が萎縮に分類され、38.6%は正常範囲とされた。健常者20名では全員が正常範囲とされ、高齢者では有意(p<0.01)に萎縮状態にある者が多いことが示された。また、評価部位の選定については、舌観察時の体位および観察時間から、舌尖端から約10mmの中央部が評価部位として適切であると思われた。客観的な評価方法としては、舌粘膜をシリコンラバー印象剤で可急的に無圧状態で印象採得して、その印象面の表面粗さ測定器を用いて表面粗さ(Ra)としてその数値を評価する方法が最も簡便であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
今年度は1 年目で、目標としては、舌粘膜の評価部位の選定および表面粗さを含めた舌粘膜萎縮度の工学的評価方法の選定であったが、臨床的な高齢者の舌粘膜の分類についても実施できた。臨床的な評価では、高齢者の約1割で舌の萎縮が見られることが明らかになり、これを客観的に評価することにより、全身的な状態の把握の一助になる可能性も示唆された。
2年目の26年度は、印象採得により作成した模型(印象面)による萎縮度の客観的な評価方法の確立と2 次元的写真画像との相関解析を行う。舌乳頭の萎縮は、臨床的にも貧血や全身状態とも関連あるといわれていることから、これらとの関連性についての評価も追加できればと考えている。3年目については、予定通りに、舌粘膜の規格写真撮影画像による舌乳頭萎縮度スクリーニング検査方法の確立を行い、臨床応用できるシステムについて、関連企業との連携も含めて具現化できるようにしたい。
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