研究課題/領域番号 |
25463264
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中野 善夫 日本大学, 歯学部, 准教授 (80253459)
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研究分担者 |
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60372885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細菌叢 / 口腔内細菌 / 口臭 |
研究概要 |
福岡歯科大学総合歯科学講座にて、ボランティアの同意を得て、20人から140サンプルを採取した。この内、10人には亜鉛による洗口を行い、菌叢に与える影響を調べている。このサンプルから細菌固有の16S rRNA遺伝子の保存領域を利用したPCR法で増幅することで、ヒトの遺伝情報も侵害することのない、細菌叢遺伝子情報が得られる。塩化亜鉛水溶液で洗口しながら、週に2回唾液および舌苔サンプルを採取した。唾液中の細菌を遠心分離で集め、菌体を粉砕したのちDNA を精製した。これを塩基配列決定用サンプルとし、16S rRNA遺伝子共通領域の塩基配列をプライマーとしてPCR法でDNA断片を増幅した。得られた16S rRNA遺伝子断片を、MiSeqシステムを用いて塩基配列を決定した。口臭検査結果のあるものについては、細菌叢と口臭との関係についても解析をおこなった。それぞれのサンプルあたり30000~140000のコンティグが得られた。CD-HIT-OTUなどのソフトウェアを用いた解析により、各サンプルにおよそ30~70のOTUが認められた。現在この350億塩基の配列について解析を進めているところである。 亜鉛は、口臭の抑制剤に含まれていることが多く、特定の菌の生育を抑制するという報告もある。亜鉛と口臭が細菌叢とどのような関係があるかということについて、細菌叢から種機械学習の手法と出現頻度による重みづけを組み合わせて、メチルメルカプタンがヒトの嗅覚で関知できる濃度を上回るかどうかの予測を行ったところ、サンプル間出現頻度のエントロピーに基づく係数で重みづけした値を用いて予測した精度が最も高く82.5%という値が得られ、そのときの感度(sensitivity)が95.0%となった。この結果は、唾液サンプルから、高確率で口臭の有無が予測でき、口臭の予備的診断にふさわしい検査・予測方法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボランティアの確保とサンプル採取にやや手間取ったが、初年度の予定どおりの第一回解析サンプルから配列情報が得られた。それぞれのサンプルあたり30000~140000のコンティグが得られた。CD-HIT-OTUなどのソフトウェアを用いた解析にも予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はMiSeqの結果の解析を進め、亜鉛による影響の強い菌種を明らかにする。その菌を培養して、亜鉛の添加による生育阻害の有無を確認する。また、プロテオーム解析等によりどのような変化が生じているかを解析する。同時に、亜鉛によって細菌の主たる口臭原因物質である揮発性硫化物の産生能にどのような変化が生じるかを解析する。 同時に、減少した菌(あるいは増加した菌)の揮発性硫化物産生能を測定する。培養液から発生する揮発性硫化物ある いはメチオニン水溶液を使った懸濁液から発生する揮発性硫化物をガスクロマトグラフィーで分析する。 実際に口臭のある被験者を募り、亜鉛洗口によって菌叢がどのように変化するかを、昨年度よりも長期にわたってサンプルを採取し、菌叢の変化を解析する。感受性のある種も耐性を獲得して元の菌叢に戻っていくのか、あるいは新たな安定した菌叢が形作られていくのかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
MiSeq解析のサンプル数単位が80~120サンプルだったので、100310円分の解析は発注できなかった。 この解析分は、次年度の解析と合わせてMiSeq発注単位範囲内に調整して実施する。およそ10~20サンプル分に相当する。
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