平成22年度歯科医師国家試験出題基準では,歯科医学領域の新たな病態として口腔顔面痛,ブラキシズム,睡眠時無呼吸症候群が追加された.本研究の目的は,疼痛学および睡眠医学に関する臨床判断能力の習得とエビデンスに基づく治療法の選択のために,バーチャルペイシェントを作成し,患者や学習者に危険のない安全な環境で,時間や場所にとらわれず何度でも繰り返し行えるウェブ配信型の学習システムを開発、運用し公開すること,さらに将来予想される歯学教育認証を見据え,歯科医学における新進の領域である疼痛学と睡眠医学の教育基準を提言することにより歯科医学生の質を担保し,歯科医療の質の向上を図り,国民医療に貢献することであった. 本年度はまれな臨床経過をたどった三叉神経痛症例を報告しバーチャルペイシェントのシナリオに追加した.また,心臓性歯痛の症例から製作したバーチャルペイシェントを用いて,完成したシステムについても報告することができた.さらに,世界中の歯科医学における新進の領域である口腔顔面痛のシンポジウムで講演する機会を与えていただいた.本システムを用いた教育効果に関しては現在も研究が進行中である.一般に向けた情報開示として、予定していた口腔顔面痛と関連する歯科睡眠医学に関するホームページを立ち上げ公開することができた.調査した世界標準となっている疼痛関連カリキュラムや国際学会による診断基準などに学習者を誘導できるように製作することができた.本研究補助により行われた成果により,本邦における口腔顔面痛学の発展に寄与できたのではないかと考えている.
|