研究課題/領域番号 |
25463268
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
小松崎 明 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (60256980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サルコペニア / 赤外線サーモグラフィー / 近赤外分光分析法(NIRS) / 咀嚼機能 / 介護予防 / 血流量 / 皮膚体温 / 唾液腺マッサージ |
研究概要 |
本研究の目的は,口腔の持つ摂食・嚥下機能を支持する動的周囲環境を,赤外線サーモグラフィー(以下TGとする)画像測定法,および近赤外分光分析法(以下NIRSとする)を用い詳細にモニターし,顎口腔サルコぺ二ア(筋肉減少をなどの廃用的変化を中心とした退行的変化)の前兆的変化を把握するため,冷却負荷前後での比較による血流量変化を活用した新指標を開発することである。この初年度の課題として,(1)~(3)を遂行した。 (1)顎口腔サルコペニアの発症予測モデルのプロダクト:先行研究から蓄積した頬部TG熱画像を基に,測定候補点を設定し,咀嚼機能を主機能と想定した場合の咬筋部血流の動態を支持機能指標として,他因子も含めた関係性を評価し予測モデル化した。 (2)試作評価システムの構築:先行研究での測定システムにTG1台を追加し,対照側の同時測定を可能とした。被検者により咬筋栄養動脈の走行には違いがあり,NIRSするターゲット部位の設定方法を検討した。その結果,冷却負荷後の冷却中心を位置が,最も温度変化幅が大きく,脈管位置に近似していたため,ターゲットとして設定できると考えられた。 (3)高齢者に対する試験的応用,データの収集および再現性の確認:高齢者3名と対照者2名に対して試験測定システムで測定を実施し,TG,NIRSのデータを収集(TG画像でターゲティング後にNIRSで唾液腺マッサージ効果を評価) 以上のデータから,試験評価システムでの測定点の検討,解析用アルゴリズムの試作を重回帰分析等から試み,予測モデルの再評価を実施した。唾液腺マッサージだけでなく,口腔体操後の変化も測定可能だったことから,TGおよびNIRSを組み合わせた試作測定システムは,顎口腔機能の新たな評価指標の開発に寄与すると想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NIRS測定パッドの頬部への装着に関して,ある程度は予測していたが検出器周囲の遮光度の問題が発生し,その対策の検討が必要だった。独自に遮光フィルムを使用することで測定が可能となったが,その間に遅れが生じた。 また,咬合接触面積を測定する透過レーザー法測定器のドライバソフトが,OSの交換によりバグが発生し,業者に依頼しを測定開始までに期間を要した。 これら理由により,当初の目標より測定計画に遅れが生じた部分もあるが,試験的な測定を行い,TG熱画像からNIRS測定ターゲットを決定する評価方法を試行することができた。唾液腺マッサージ効果もNIRSでも確認できたことから,研究全体としては,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関しては,構築した試験測定システムでの測定を継続し,再現性の検証を行うとともに,現在歯数や咬合接触面積などの口腔状況だけでなく,申請時には計画していなかった握力や活動量などの体力指標などを評価項目に追加し,幅広く影響要因について検討を行う予定である。 本研究は従来の研究とは異なり,多要因性と考えられているサルコぺニアが、歯の喪失などの口腔内形態変化の影響を受け主機能の低下が生じ,支持機能の意義が相対的に低下したことが原因で廃用的変化が短期間に生じるとの仮説に立っている。この仮説を障害型予測モデルと介入型予測モデルを作成し両者で検討したが,介入型予測モデルでは,使用を想定している高齢者での対象数をより増やし評価を行う必要がある。このため,高齢者での被検者を増やし,介護予防効果の測定が可能かどうかについて,検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試験測定システムの構築に時間を要し,高齢者の被験者数が当初の予定より減少したため。 次年度も予定被験者数が得られるよう試験システムでの測定を継続するとともに,新たに追加購入が必要となった,NIRS検出器用遮光フィルム購入に充当する予定である。
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