研究課題/領域番号 |
25463270
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
今井 奨 鶴見大学, 歯学部, 寄附講座教授 (80072958)
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研究分担者 |
太田 一正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (30307376)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミュータンスレンサ球菌 / 付着因子 / 唾液 / チンパンジー |
研究実績の概要 |
平成26年度研究計画に沿って、本年度はヒト由来ミュータンスレンサ球菌、チンパンジー由来ミュータンスレンサ球菌等を用いて、プラスッチック壁(96-wellプレート)への初期付着を検討した。ヒト唾液によるプラスチック壁面の前処理により唾液成分を予め付着させて獲得皮膜様の膜を形成させたwellとその対照として滅菌水のみで処理したwellを準備した。そこに0.1%スクロース含有TS培地、ヒト由来ミュータンスレンサ球菌のStreptococcus mutans ATCC 25175、S. mutans GS5、S. mutans LM7、S. mutans UA159、Streptococcus sobrinus ATCC 33478、S. sobrinus 6715、チンパンジー由来ミュータンスレンサ球菌のStreptococcus troglodytae TKU31、Streptococcus dentirousettiTKU32あるいはコオモリ由来Streptococcus dentirousetii JCM14596菌体懸濁液を加えて培養し、付着画分、非付着画分のバイオフィルム量を測定した。その結果、唾液前処理により付着量が増加したのはS. sobrinus 6715であったが、他の細菌は唾液前処理による付着量の増加は認められなかった。S. sobrinus 6715の付着量増加が唾液成分と関連しているのかを現在解析中である。また、培養条件についても検討中である。 人工口腔装置を用いて、ヒト由来ミュータンスレンサ球菌のS. mutans とチンパンジー由来ミュータンスレンサ球菌のS. troglodytae, S. dentirousettiによるエナメル質表面へのバイオフィルム形成、バイオフィルム直下pH、エナメル質脱灰度を調べた。S. mutansおよびS. dentirousettiの場合、人工口腔装置稼働4時間でバイオフィルム下pHが低下し始め、16時間後にそれぞれpH4.1および4.4に低下した。S. troglodytaeの場合はやや遅れて12時間後にpHが下がり始め、24時間後にpH4.6まで低下した。いずれの場合も明らかなエナメル質脱灰が認められ、う蝕原性を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度として、ヒト由来ミュータンスレンサ球菌、チンパンジー由来ミュータンスレンサ球菌のヒト唾液処理プラスチック器壁への付着については検討しているが、個々の唾液成分の影響についてなお調べる必要がある。人工口腔装置におけるヒト由来およびチンパンジー由来ミュータンスレンサ球菌の、エナメル質歯片へのバイオフィルム形成、バイオフィルム直下pH、エナメル質脱灰について検討したが、この系における唾液および個々の唾液成分の影響については今後の問題である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で、霊長類(ヒトおよびチンパンジー)由来のミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成能がin vitroの系で分かってきており、特にチンパンジー由来のミュータンスレンサ球菌もエナメル質脱灰性を有する、いわゆるう蝕原性レンサ球菌であることが示唆されてきた。今後はミュータンスレンサ球菌の付着・バイオフィルム形成における個々の唾液成分の役割を明らかにしていく予定である。また、スクロース存在下でのバイオフィルム形成の主要な因子であるグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)の構造を塩基配列の異同から検討する。比較的近い関係にあるヒト由来S. mutansとチンパンジー由来S. troglodytaeのGTFの異同、あるいは、ヒト由来S. sobrinusとチンパンジー由来S. dentirousettiのGTFの異同についても明らかにする必要がある。これらの検討を通してミュータンスレンサ球菌のヒト口腔定着能を規定するファクターまたは遺伝子領域を検索し、う蝕予防方法への応用を目指す。
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