研究実績の概要 |
【目的】わが国は、他国に比べHCV感染者が高齢化しており、多方面から治療の方策を考慮する必要がある。一方、歯周病菌は心血管系疾患、2型糖尿病等の全身疾患と関わることが示されている。なかでも、Porphyromonas gingivalis (P.gingivalis) はNAFLDの原因となりうることがわかっている。しかし、HCVやHBV感染者における肝病態の進展とP.gingivalisに関するデータは存在しない。本研究では、歯周病菌がHCVやHBV感染のある肝疾患患者の肝進展に関わるリスク因子になりうるかを検討した。 【方法】2010年2月~2014年6月までに受診した患者433名のうち351名について(無歯顎9名、唾液潜血反応未検査34名、正常肝20名、非ウイルス性肝疾患19名除く)、歯周病と肝病態を解析した。歯周病の存在有無は唾液潜血反応を用いた。さらに、28名のHCV感染者に対してP. gingivalisの線毛関連遺伝子型(I, Ib, II, III, IV, V)を同定した。 【成績】対象351名のうち、唾液潜血反応強陽性76名と弱陽性/陰性275名の2群間で有意な因子は、肥満・血液生化学検査値異常・Alb・AFP・血小板数・HOMA-IR・IFN治療中・歯磨き回数であった。肝硬変の存在は有意な傾向を示した(p=0.0566)。多変量解析により歯周病のリスク因子は、血小板数8万/μl未満・歯磨き1回/日・IFN治療中・65歳以上・肥満であった(各オッズ比は5.80, 3.46, 2.87, 2.50, 2,33)。C型肝硬変/肝癌患者(14名)は、C型肝炎患者(14名)よりも進行性歯周炎と関連が深いfimA genotype IIの保有率が高かった(50% vs. 21.4%)。 【結論】歯周病患者には、AFP高値、血小板減少、低アルブミン血症、高ビリルビン血症を認め、肝硬変患者にはfimA genotypeIIの保有率が高かった。以上より歯周病は、肝病態の進行に関与する可能性があり、歯科医師と肝臓専門医との医療連携がより重要であると考えられた (Hepat Mon 2014)。
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