研究実績の概要 |
【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)は肝外病変を引き起こし、その代表的な口腔疾患として扁平苔癬、シェーグレン症候群等が知られている。本研究では、口腔環境と肝線維化との相互関係を探索した。 【対象と方法】口腔診査を受けたHCV感染患者124名のうち、IFN治療導入後に肝臓と口腔のコンサルトを同時に受けた患者に対して、治療前・治療2週・3M ・6M・終了・終了6Mに、カンジダ菌定性定量検査、口腔粘膜疾患診査、唾液量/体重測定、血液生化学検査、腹部エコー検査を行なった。治療中に少なくとも一度カンジダ菌を検出した患者(グループ1)と未検出患者(グループ2)を比較した。また、2010年2月~2014年6月までに受診した患者433名のうち肝炎ウイルス感染のある351名について歯周病と肝疾患の病態を解析した。 【結果】カンジダ菌の検出率は50%、粘膜疾患の発現率は50%であった。2グループ間で有意差を認めた項目は、粘膜疾患の存在・外用副腎皮質ホルモン剤使用・体重減少(各々P=0.0075、P=0.0308、P=0.0088)。全対象者がIFN治療中に唾液量が減少したが、終了後に改善した。多変量解析によるカンジダ菌検出のリスク因子は、粘膜疾患の存在であった(オッズ比36.00)。ウイルス性肝疾患患者351名のうち、歯周病進行者76名と非進行者275名の2群間で有意な因子は、肥満・血液生化学検査値異常・Alb・AFP・血小板数・HOMA-IR・IFN治療中有無・歯磨き回数であった。多変量解析による歯周病のリスク因子は、血小板数8万/μl未満・歯磨き1回/日・IFN治療中・65歳以上・肥満であった(各オッズ比 5.80, 3.46, 2.87, 2.50, 2,33)。肝臓の線維化進展患者は、fimA genotype II型の保有率が高かった(50% vs. 21.4%)。 【結論】IFN治療を受ける患者は、口腔粘膜疾患の存在や体重減少に注意を払う必要があり(BMC Gastroenterol 2012)。歯周病はウイルス性肝疾患の病態進展に関与する可能性がある (Hepat Mon 2014)。
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