研究実績の概要 |
齲蝕と歯周病は、日本人の歯牙喪失の主な原因である。乳歯齲蝕が多いと永久歯の齲蝕も多い傾向があるため、乳歯齲蝕のリスク要因を解明することは、永久歯の齲蝕予防の観点から、非常に意義深い。また、歯周病は年齢が高くなるにつれてその有症率も高くなるため、若年期における歯周病のリスク要因を明らかにすることは、中高齢期の歯周病の発症及び進行、更には歯牙喪失防止の観点から重要である。今回、エビデンスレベルの高い出生前開始前向きコホート研究である「九州・沖縄母子保健研究」のデータを活用し、乳歯齲蝕における胎児期及び出生後のリスク要因及び母親の歯周病のリスク要因を解明する。九州・沖縄母子保健研究では、妊娠中のベースライン調査に1757名の妊婦が参加した。出生時、4ヶ月時、1~5歳時の追跡調査を終了した。4ヶ月時調査では、母親の歯周ポケット測定を実施し、母子の遺伝子解析試料も得た。唾液中のコチニン濃度測定用の唾液検体も得た。2、3、6歳時追跡調査では、乳歯齲蝕の情報を得た。各追跡調査が終了次第、データベースを作成し、それ以前のデータとリンケージしている。 平成27年度は7歳時追跡調査を実施した。7歳時追跡調査では、質問調査票により、家庭内喫煙状況、身体活動状況、行動的問題、歯科保健行動、感染症罹患状況、身長、体重、視力等の情報を得た。 IL1遺伝子多型(rs1800587, rs1143634,rs16944)と歯周病との関連に関する解析では、SNPrs16944のGG遺伝子型に比較し、GA遺伝子型は歯周病のリスク低下と有意に関連していた。しかしながらSNPrs1800587、rs1146934とは関連を認めなかった。今後も引き続き、子のう蝕及び母親の歯周病のリスク要因、予防要因に関する解析を進めていく。
|