研究実績の概要 |
【目的】舌圧と嚥下圧は、嚥下機能にとって欠かせない要素であるが、神経筋疾患別の特徴はほとんど知られていない。この研究の目的は、神経筋疾患患者の舌圧と嚥下圧の特徴を示すことである。【方法】デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)17名、筋強直性ジストロフィー(DM1)32名、筋萎縮性側索硬化症(ALS)26名の舌圧と5ml液体嚥下時の嚥下造影検査と咽頭内圧の測定を行った。複数回嚥下を行った際の、下咽頭圧と食道入口部の圧変化を測定し、その最大値について分析した。【結果】DMD群の舌圧(21.7±7.8kPa)は、他の2群(DM1群,13.9±6.4kPa; ALS群,13.5±10.2kPa)よりも有意に高かった(p<0.01)。またDM1群の嚥下圧(下咽頭,51.1±29.9mmHg; 食道入口部,95.6±92.2mmHg)は、他の2群(DM1群の下咽頭,95.1±42.4mmHg; DM1群の食道入口部,217.9±135.4mmHg; ALS群の下咽頭,111.0±32.4mmHg; ALS群の食道入口部,160.8±75.8mmHg)よりも有意に低かった(p<0.01)。DMD群では食道入口部の圧変化と年齢の間に(R=-0.05, p=0.045)、DM1群では下咽頭圧の変化と舌圧の間に(R=0.421, p=0.016)有意な相関関係が認められた。ALS群では下咽頭圧の変化と重症度(ALSFRS-R)の間に有意な相関関係が認められた(R=0.435, p=0.030)。【結論】DMD患者は舌圧と食道入口部の内圧を維持していたが、加齢とともに低下する傾向にあった。DM1患者は舌圧と下咽頭圧が著明に低下していた。ALS患者は舌圧が著明に低下し、下咽頭圧は維持していたが、ADLとともに低下していた。神経筋疾患は嚥下関連筋に筋力低下を示すが、嚥下機能の低下にはそれぞれの特徴があり、その特徴に見合った対応方法を提供する必要がある。
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