研究課題/領域番号 |
25463278
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
岩元 知之 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (70611458)
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研究分担者 |
廣藤 卓雄 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (10189897)
谷口 奈央 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60372885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロバイオティクス / L.salivarius WB21 |
研究概要 |
プロバイオティクスは、消化管内の細菌叢を改善し宿主に有益な作用をもたらしうる微生物である。プロバイオティクスを摂取すると、それが消化管内の細菌叢に作用し、細菌叢の健常化をはかりながら、疾病の予防や改善を行う。Lactobacillus salivarius WB21株は、口腔の健康維持における有用性が注目される乳酸菌である。これまでに、健常人ボランティアを対象としたランダム化比較試験において、8週間のL. salivarius WB21配合タブレットの摂取は、喫煙者群でプラーク付着指数と歯周ポケットに有意な改善をもたらした。また、歯肉縁下プラーク中の歯周病原細菌Tannerella forsythiaの有意な減少をもたらした。我々は、プロバイオティクスによる口腔環境の健全化は口臭予防管理にも有用であると推測し、口臭患者を対象にL. salivarius WB21配合タブレットの摂取が口臭にもたらす影響を評価した。また、幼児や高齢者も安全に摂取できるようオイルタイプを開発し、歯周病患者を対象にL. salivarius WB21配合オイルの効果を検討した。WB21配合オイル群ではプラセボ群に比較して、プロービング時出血の改善効果が有意に優れていた。唾液中の細菌定量解析では、WB21配合オイル群で全菌数の有意な減少とL. salivariusの有意な増加がみられた。WB21配合オイルの摂取は、歯周組織を改善し、細菌の繁殖を抑制するなど、口腔環境の改善に役立つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口臭患者を対象にL. salivarius WB21配合タブレットの摂取が口臭にもたらす影響を評価した。評価を行うために口臭患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を行った。官能検査値はWB21期とプラセボ期で共に有意に改善した。揮発性硫黄化合物 (volatile sulfur compounds, VSCs) については、WB21期で有意な減少がみられ、プラセボ期との間に統計学的有意差が認められた。臨床パラメータにおいては、WB21期ではプラセボ期に比較して歯周ポケットの有意な減少がみられた。唾液中の細菌の定量解析では、WB21期ではプラセボ期に比較して全菌数とVSCs産生能を持つFusobacterium nucleatumの菌数が有意に減少した。このように、WB21配合タブレットの摂取は、口臭および口臭に関連する因子に効果があることが明らかになった。また、乳酸菌が産生する強酸によるエナメル質脱灰し齲蝕促進する可能性も考えられるため齲蝕リスク因子に与える影響を調べた。結論としてWB21タブレットはキシリトールタブレットに比較して唾液中のミュータンスレベルを有意に減少させた。LS1タブレットはキシリトールタブレットに比較して刺激唾液量と唾液緩衝能を有意に増加させた。またどちらの乳酸菌配合タブレットも摂取後に唾液pHを低下させることはなかった。ゆえに、乳酸菌配合タブレットはう蝕リスク因子に対して抵抗性を示すと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
口臭患者を対象とした非盲検試験、口臭患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験、歯周病患者を対象としたL. salivarius WB21配合オイルの二重盲検ランダム化比較試験、これらの実験によりプロバイオティクスの口腔内での作用により口臭の口臭および口臭に関連する因子に抑制する効果があることが明らかになった。また、歯周組織を改善し、細菌の繁殖を抑制するなど、口腔環境の改善に役立つことが示唆された。そして、乳酸菌による齲蝕リスク因子に与える影響の臨床評価ではう蝕リスク因子に対して抵抗性を示すと考えられた。そこで、長期的な介入試験を行い長期にわたる齲蝕リスク因子や、口腔内の影響についての変化を実施する。また、in vitro実験を行いミュータンス菌、VSC産生菌、歯周病原細菌に対してどのような作用機序により効果もたらすのか、また、口臭抑制、口腔内環境改善にどのようにしたら効果が最大になるのかを実験していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の学会の出席を予定していたが、業務の都合で行けなくなったため。実験の進行が遅れ、備品の購入が遅れているため。 今年度は学会に使用。 また、備品の購入に使用予定。
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