研究課題
(目的)アルツハイマー型認知症(AD)は変性性認知症であることから、ADを対象として、進行に伴う摂食・嚥下障害などの変化様相を把握することを目的に調査検討を行った。(対象・方法)認知症の診断がなされている要介護高齢者380名のうちAD175名(平均年齢85.3±6.8歳)を対象として検討を行った。調査項目は性別,年齢,日常生活動作指標(Barthel Index),認知症重症度(CDR、FAST),栄養状態(MNA-SF,血清アルブミン,BMI,Skeletal Muscle Index :SMI,下腿周囲径,大腿周囲径),筋力(握力,ピンチ力),歩行機能(5m通常歩行,5m最大歩行),口腔内所見(残存歯数,機能歯数,臼歯部咬合状態),口腔機能(咬筋触診,オーラルディアドコキネシス,咳テスト,リンシングの可否),摂食嚥下機能(改訂水飲みテスト,反復唾液嚥下テスト)であった。(結果・考察)FASTが重症のものほど有意に口腔機能等が低下していた。口腔機能リハビリテーションニーズや、修復・補綴治療ニーズはFASTステージ重度のものほど有意に高かったが、口腔衛生・保湿ニーズはFASTステージによらず、そのステージにおいても一定のニーズがあった。ADは進行性疾患であり、中核症状の進行を抑制することは困難であるが、認知機能,生活機能や嚥下機能それぞれが認知症のステージにより状態の変化があることを正確に把握することで、認知症の進行に伴って出現する食行動変化を予測し事前に対策をたてることが可能である。本調査結果よりFASTに対応した口腔に関するセルフケア機能や摂食・嚥下機能の推移について試案を作成し、妥当性の検討を行う必要がある。
2: おおむね順調に進展している
AD、DLBの摂食・嚥下障害の特徴を把握する実態調査内容を検討する目的に、文献渉猟および学会などで情報収集を行い、得られた知見を基に作成した調査案を使用したパイロット調査を行い調査項目の妥当性の検討を行うことを平成25年度の目標としたが、パイロットスタディにて検証した調査項目にて、AD175名を対象とした調査をすでに行い、概要に記載した結果を得た。以上から「おおむね順調に進展しいる」とした。
平成25年度は、ADを中心とした調査を行いデータの集積ができた。今後DLBも含めデータを集積し、以下の4つの課題に関して調査検討を行っていく予定である。課題1:AD、DLBの重症度別における摂食・嚥下機能障害の整理が不足している。課題2:AD、DLBの摂食・嚥下機能障害と排泄、歩行機能、言語機能などの日常生活機能との関連性の把握が不足している。課題3:AD、DLBの摂食・嚥下機能障害を変性疾患が原因の障害として捉えた、評価法および経時的変化に対応したケア方法(医療的介入法)の検討がなされていない。
計画した予算金額より調査旅費が多くかかり、本年度購入予定であったコンピューターの購入を見送ったため、54,571円の次年度使用額が生じた。本年度購入予定であったコンピューターを、次年度使用額と合わせ購入する予定である。
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Geriatr Gerontol Int
巻: 未確定 ページ: 未確定
10.1111/ggi.12131
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