【目的】アルツハイマー病(AD)は変性性認知症であることから、ADを対象として、進行に伴う摂食・嚥下障害などの変化様相を把握することを目的に調査検討を行い昨年度まで一定の知見を得た。今年度はケア方法(医療的介入法)の検討の基礎データ、特にサルコペニアに注目し検討を行った。 【対象・方法】ADの診断がなされている201名(女性 187名 平均年齢83.1±5.7歳))を対象として検討を行った。調査項目は性別,年齢,日常生活動作指標(Barthel Index),認知症重症度(CDR、FAST),栄養状態(MNA-SF,血清アルブミン,BMI,Skeletal Muscle Index :SMI,下腿周囲径,大腿周囲径),筋力(握力,ピンチ力),歩行機能(5m通常歩行,5m最大歩行),口腔内所見(残存歯数,機能歯数,臼歯部咬合状態),口腔機能(咬筋触診,オーラルディアドコキネシス,咳テスト,リンシングの可否),摂食嚥下機能(改訂水飲みテスト,反復唾液嚥下テスト)であった。 【結果・考察】身体機能障害の予測因子としてサルコペニア指標の一つであるSMIに注目し、軽度から重度AD高齢者を対象に、SMI低下の既知の関連因子も含め口腔機能、嚥下機能を包括して検討を行った。単変量解析の結果、SMIは認知症重症度に伴い低下する傾向が示唆されサルコペニアの重度化との関連性が示唆された。また、多変量解析の結果においては、アルツハイマー病高齢者SMI低下の関連因子として、認知症重症度、身体活動能力(バーサルインデックス)、嚥下機能、栄養状態(BMI、下腿周囲長)が示唆された。AD高齢者はADの進行とは別に、嚥下機能低下による骨格筋量低下も生じるため、改善が可能な原因を検討することで、ケアの方針も立てやすくなり、AD高齢者の骨格筋量低下を予防し、生活機能を維持することが出来る可能性が示唆された。
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