研究実績の概要 |
医療費増大や患者のQOLを下げる可能性の高い深部損傷褥瘡(Deep Tissue Injury: DTI)の重症化を防ぐ意義は大きい。本研究はDTI発生初期における重症化予防の看護ケア介入方法を検討した。今年度は介入温度による影響、線維芽細胞分布の変化を分析した。 【方法】6週齢のJCL/ICR雄性マウスにネオジム磁石直径10mmで圧迫創を作製した。圧迫6時間後圧迫を解除した。実験群は未処置(対照)群、冷罨法群、温罨法群とし、冷罨法(15℃程度)、温罨法(40℃程度)は45分実施し、1,3,7日目(各日n=3)に深部骨格筋も含めて皮膚全層を摘出した。一般染色、免疫組織化学染色を施し創傷の治癒過程を比較した。 【結果】肉眼所見は、6~7日目で対照群と冷罨法群は顕著な痂皮化がみられた。組織学的所見では、1日目、真皮の線維芽細胞数は圧迫下で3群とも減少する所見を示した。しかし、冷罨法群では線維芽細胞数が多い傾向を示した。1日目の圧迫部の表皮では炎症初期の炎症性細胞リクルートに深く関わるHMGB1陽性細胞は温罨法群のみ減少しなかった。5日目は特に対照群と冷罨法群の真皮、皮下組織に線維芽細胞の膨隆した核の流線的な配列が顕著に認められ膠原線維の増加が観察できた。 【考察】温罨法群では圧迫部表皮の損傷が軽度なこと、HMGB1陽性細胞が減少しないことから、温罨法が細胞の壊死を防ぎHMGB1の細胞外放出を阻止したことが示唆される。真皮、皮下組織および深部骨格筋層においては冷罨法群の線維芽細胞の活性化や膠原繊維の増加を認めたが、温罨法は逆の傾向を示した。本実験で温罨法のみ圧迫創表層の痂皮形成が抑制される結果の解析が継続して必要である。圧迫創、創周囲のHeat Shock ProteinとInterleukin-10の分布を解析する。 【結論】圧迫創の治癒過程における罨法の影響は各組織層で異なる。
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