研究課題/領域番号 |
25463290
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田中 裕二 千葉大学, 看護学研究科, 准教授 (40179792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経科学 / 神経生理学 / 看護技術 / 高次脳機能 / 意識レベル / 意識障害 / 感覚刺激 / 科学的根拠 |
研究実績の概要 |
本研究は,意識障害患者に対して意識レベルを改善する目的で行われている種々の看護援助技術のエビデンスを科学的に検討することで看護ケアの科学的根拠を解明することを目的としている。 平成26年度は,健康な成人女性7名(22.14±0.35歳)を被験者として,聴覚刺激が覚醒レベルにどのような影響を及ぼしているかを生理学的指標(覚醒レベル(BIS値),自律神経活動,心拍数)および心理学的指標から検討を行った。聴覚刺激による基礎的なデータを収集するために,無音状態,ホワイトノイズ,リラックス音として「α波・1/f マインド・コントロール せせらぎと音楽」というCDの3条件で実験を行った。音楽の聴取時間は60分間とした。BIS値および心拍数はコントロール値を0として変化量,自律神経活動はコントロール値を1として変化率で算出した。BIS値は,ホワイトノイズでは音楽聴取後30分で-18.1,リラックス音は40分後で-13.2,無音は50分後で-10.2まで減少した。その後,60分の時点では,無音は-0.22,ホワイトノイズは-6.61,リラックス音は-4.30まで値が増加した。心拍数(beats/min)は,音楽聴取後30分の時点が最も減少し,無音は-4.67,ホワイトノイズは-6.12,リラックス音は-8.62であった。副交感神経活動は,音楽聴取後50分の時点で,リラックス音は4.05,無音は2.88,ホワイトノイズは2.18の増加を示した。交感神経活動では,リラックス音とホワイトノイズは同じような傾向を示したが3つの条件では差がみられなかった。 以上のことから,ホワイトノイズおよびリラックス音による刺激,また,60分間の音楽聴取時間では覚醒レベルの指標であるBIS値に有意な影響が示されなかったことから,今後,聴覚刺激の種類および聴取時間についての検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室のある建物が昨年度から改修工事になり,本年度5月末に改修工事が竣工した。その後,実験室のセットアップを行い,十分な実験時間を確保することができなかったために研究の達成度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.意識障害患者に対する看護援助技術の実態調査(国内および海外) 意識障害患者に対して意識レベルを改善する目的で行われている種々の看護援助技術について国内外の文献を検討するとともに,国内および海外の施設において実態調査を行い,そのエビデンスを明らかにする。具体的には,欧米諸国における意識障害患者に対する看護援助について,どのような生理的メカニズムに作用することを目的に実施されているのかについて明らかにする。また,看護ケアの文化的な相違についても検討するために,アジア地域として大韓民国(韓国)での看護援助技術について調査することで,欧米およびアジア諸外国における意識障害患者に対する考え方や看護技術について文化的な背景を視点に検討する。
2.実験研究の実施 今までの研究報告から,背面開放座位は意識レベルの改善に効果があることが示されている。さらにどのような刺激を背面開放座位実施時に併用すれば意識レベルの改善に影響を及ぼすかについて,健康な成人(20~30歳代)を被験者として,覚醒レベルと刺激の種類(痛覚刺激,聴覚刺激,芳香刺激など)および刺激強度との関係を生理学的指標(覚醒レベル,脳波,自律神経活動,筋電図,体性感覚誘発電位,バイタルサインなど)および心理学的指標から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた看護ケアの文化的な相違について検討するための海外視察が日程的な関係で実施することができなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
看護ケアの文化的な相違について検討するために,アジア地域として大韓民国(韓国)とヨーロッパ地域としてフランス共和国の訪問を計画している。
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