研究課題/領域番号 |
25463307
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
工藤 京子 札幌市立大学, 看護学部, 助教 (80452994)
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研究分担者 |
中村 恵子 札幌市立大学, 看護学部, 教授 (70255412)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 患者会 / 在宅酸素療法 / 避難行動 / 災害支援 |
研究概要 |
本研究の目的は、北海道における在宅酸素(HOT)利用者の患者会が主体となった自助行動としての災害時避難システムの構築である。本年度は①過去の災害時の実態を明らかにする、②北海道におけるHOT患者、酸素業者の災害に対する認識と取り組みを明らかにすることを計画していた。 ①については、東日本大震災の経験者の講演や先行研究、図書を確認し検討した。震災時HOT患者達は通常の酸素流量を減らしながら呼吸法でしのいでいたことが明らかになり、今後はさらに当事者にもインタビューして得られた結果を北海道の状況と関連させ考えていく予定である。 ②では北海道低肺の会という患者会の会員95名に災害発生時の備えについて質問紙調査を実施した。質問紙ではHOT使用の有無、行動状況、災害への意識と備え、認識等を調査した。回答者52名中、半数の26名がHOT利用者だった。災害の意識は全員が持っており避難所も7割の人が知っていたが災害の備えとなると半数の人が何もしていなかった。家族と災害時の連絡方法を話している人は4割弱、医師と災害時の話をしたことがある人はわずか1人であった。災害発生時の行動については、助けが来るのを待つ・避難しないと答えた人が6割で最も多く、次いで3割が何とか自分で避難所に行くと答えていた。しかし、逃げるにも階段を降りられない、避難所までたどり着けない、避難所に行っても酸素があるのかわからない、避難所ですぐに体調を崩しそうと、深刻な不安があることも明らかとなった。回答者の8割が夫婦2人暮らしであり、避難しないと答えた患者の家族の課題も改めて見えてきた。災害時にはHOT利用者だけでなく同居家族を含めて避難行動を考えなければならないことが示唆された。酸素業者への調査は、現在進行中であり次年度に成果を報告できる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者会の主要メンバーであり今回の研究の理解者であった副会長と会長が相次いで亡くなり(昨年7月、今年1月)、患者会の運営自体が危機的状況となったため、調査や研究を進める前に、運営を軌道に乗せる必要が生じた。 現在、会長代行が決まったものの、その他の役員がなかなか確保できないことから、会の運営の支援を行ないつつ調査を進めている。 研究目的が患者会が主体となることだけに、再度、理解を求めながら実施している。反対者はいないが、役員の方々に余裕がない状況であるため、認定看護師や専門看護師と共に、比較的若い会員を確保すべき啓蒙活動を行ない、マンパワーを増やしていく事を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、酸素業者に対する調査と分析を早急に進め、患者の状況と対比させることで、問題と解決方法を探求する。 その上で、HOT利用者とその家族が求めていることと、患者会でできることを再度考察する。酸素業者へ働きかけられる事も考察する。これらの事を実際に計画/実施していく。 そして、最終的には、市町村レベルで考えなければならない事についても提案できるよう明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は患者会への支援に比重が置かれた結果、道外へのインタビュー調査を実行する目処が立てられなかった。そのため、まだ未購入の物品があることに加えて、調査にかかる旅費も消費できておらず、今後の実施に伴い発生する予定である。 インタビュー調査を実施するために必要な物品(モバイルノートパソコン、保存用ハードディスク、酸素飽和度測定器、分析ソフト一式)を購入・調整していく。また調査に行くための旅費、調査結果を学会発表するための旅費、データ入力作業の人件費などへの運用を考えている。
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