研究課題/領域番号 |
25463311
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
及川 正広 岩手県立大学, 看護学部, 助教 (60537009)
|
研究分担者 |
平野 昭彦 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (30305255)
武田 利明 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)
三浦 奈都子 (小山 奈都子) 岩手県立大学, 看護学部, 助教 (40347191)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 抗がん剤 / ロゼウス / 血管外漏出 / 罨法 / ステロイド |
研究概要 |
今年度行なった抗がん剤漏出における看護ケアの実態調査では、外来化学療法室に勤務する、がん化学療法看護認定看護師から、新たにロゼウス漏出による皮膚傷害に関する情報を得た。ロゼウスはナベルビンの後発医薬品でビンカアルカロイド系抗がん剤に属し、使用頻度も年々増えている薬剤である。治療時に違和感や疼痛などの訴えがあり、漏出により皮膚傷害のケースも聞かれた。添付文書にも同様の内容が記されており、ケアの検討を希望された。ケアに関する実験は、漏出時一般的に行なわれている罨法作用とステロイドの局所皮下注射の効果に関して行なった。方法としては、実験動物(ラット)背部の皮膚組織2ヶ所に薬液を注入し漏出状態とした。罨法作用に関しては、温罨法群(漏出部位の皮膚表面温度を18~21℃に保ち30分罨法を行う)、冷罨法群(漏出部位の皮膚表面温度を40~42℃に保ち30分罨法を行う)、対照群の3群に分け、それぞれの傷害治癒過程について観察を行った。ステロイド局所皮下注射の作用に関しては、左右漏出部の内1カ所に、ステロイドを周囲から中心に向け注入し(ステロイド群)、ステロイドを注入しない漏出部(非ステロイド群)との傷害治癒過程について比較検討を行った。本研究結果からは、ロゼウスでは、一般にビンカアルカロイド系抗がん剤漏出時に推奨されている温罨法に比べ、冷罨法で傷害が少ない知見を得た。また、ステロイド局所皮下注射に関しては、明らかな抗炎症効果を期待する所見は確認できなかった。 これらの知見については、罨法について看護系学会学術集会で発表し、ステロイドの局所皮下注射については、次年度発表予定である。また、これら実験観察において非侵襲的にサーモグラフィや皮膚エコーでの観察所見に関しても学術集会で発表を行ない、知見の共有を図った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実態調査から浮かび上がった看護師の気づきに焦点をあて、その疑問に対し検証を行い、看護系学会学術集会での発表まで行なうことができたことは一定の成果が達成できたと考える。しかし、検証した薬剤が1種類のみに留まり、他の抗がん剤の検証にまで至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
臨床看護師からの情報提供と文献検索などを引き続き行ない、看護師の気づきをベースとした実証的研究を行なっていく。さらに血管炎などの病態モデルの開発を試み、抗がん剤投与による血管への影響とケアについても検討を行なっていく。また、得られた知見は論文、看護系学会学術集会、看護師との交流会などを通して共有を図り、臨床に還元していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由としては、本年度は1種類の抗がん剤に対する検討となったため、実験動物、抗がん剤、麻酔薬、組織標本作成などが必要最低限の予算で行ったことが理由である。 次年度は、看護師からの情報収集をさらに広範囲に実施し、複数の抗がん剤での検証、また、新たな病態モデルの開発を行なう。その為、本年度よりさらに研究内容が拡大するため、研究翌年度分として請求した助成金と合わせ研究に活用することができる。
|