研究課題/領域番号 |
25463317
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
習田 明裕 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60315760)
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研究分担者 |
志自岐 康子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 名誉教授 (60259140)
三輪 聖恵 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (20457831)
笠原 康代 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (00610958)
前田 耕助 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (40736899)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 院内コーディネーター / 脳死臓器移植 / 倫理的対応モデル / 看護 / 終末期医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、院内コーディネーター(以下、院内Co)の倫理的対応モデルを構築することである。本年度は米国の同職種の役割・機能の実態を探り、日米の比較を通しながら、わが国における院内Coの倫理的課題を抽出し、倫理的対応モデル構築に向けた示唆を得ることを目的とした。その結果、ジョブディスクリプションについては「臓器提供プロセスへの関与」「人的・組織的マネジメント」「医療スタッフへの教育」「移植に関する教育・啓蒙活動」等、日本と大きな齟齬はなかった。しかし日本の院内Coの殆どが兼業であるのに対し米国は専業であり、さらにその職務権限も米国とは大きく異なっており、専門職としての自律性に大きな相違があった。自律性(Autonomy)の担保は専門職が専門性を発揮する前提であり倫理的実践の核であることから、モデル構築に向け大きな課題の存在が示された。さらに臓器調達という側面において米国は臓器提供をコントロールしているUNOS(全米臓器配分ネットワーク)の会員組織であるOPO(臓器獲得機構)が臓器確保を目的としているが、日本における臓器移植ネットワークは臓器の斡旋組織でありその確保を目指す組織でないため、院内Coがこうした外部組織と連携できず孤立した存在となる可能性も懸念された。さらに本研究では「臓器提供」を残された家族の看取りの一つとして捉えられるように援助することを院内Coの重要な役割として捉えているが、米国では臓器提供はあくまでも脳死となった本人の生前の意思であって、そこに家族の意思を介在させたり考慮させたりという看護的視点は皆無であった。しかし日本の脳死臓器移植の現場においては、臓器移植法が改正された現在においても脳死ドナーの家族の意思を尊重することが大前提であるため、改めて米国とは異なった役割・機能を持つ日本の院内Coの存在の重要性が示唆されたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
倫理的対応モデル構築に向けた院内コーディネーターの職務内容に関する検証、及び脳死移植のプロセスに関する実態調査については概ね達成された。しかし当初予定していた米国における同職種の役割・機能に関する面接調査については、ネットインフラ(SNS)を介してデータを収集することが可能になったため研究計画の見直しが必要になり、倫理的対応モデルの構築が進んでいない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
集積したデータや検討結果をもとに、倫理的対応モデルを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画当初予定していた海外での面接調査について、ネットインフラを介して概ね収集できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
倫理的対応モデルの信頼性や妥当性について、現場の医療者の視点で検証するための調査費として使用する予定である。
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