足浴は主として、患者様への清潔援助を目的とするもっとも基本的な看護ケアのひとつで、足浴についてはこれまでに、入眠導入促進効果、血液循環改善効果、リラクゼーション効果、疼痛緩和効果、免疫機能促進効果などの効果が明らかにされているが、足浴の血栓症予防効果に関してはいまだ明らかではない。足浴においては更湯が一般的であるが、炭酸水、薬用植物、アロマオイルなどを用いる場合もあり、炭酸水使用時には糖尿病性足病変の改善及びその予防効果が確認されており、足浴に使用する湯の種類を変化させた場合の効果には無限の可能性が秘められていると考えられる。 我々は昨年度までに、健常女性を被験者として、ローズマリーをお湯に添加するのではなく直接10分間手に擦り込んだ後の足浴では、37℃、40℃及び43℃という幅広い湯温を用いた20分間の足浴で、血管内皮細胞が産生・分泌する線溶阻害因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1)の血漿濃度の低下による血栓症予防効果を明らかにしてきた。本年度は、整形外科領域の超音波検査により血栓形成が認められない、入院期間が10日以上の患者様に対して足浴前後に微量採血を実施し、得られた血漿中のPAI-1濃度を測定した。その結果、残念ながら、40℃の足浴を実施した被験者(n=3)については足浴前後で血漿PAI-1濃度の有意な差は認められなかった。今後はローズマリーを手に擦り込んだ後の40℃の湯温を用いた20分間の足浴については被験者を増やして検討を進めることとし、被験者の同意が得られれば、37℃及び43℃の湯温についても同様の検討を実施し、ローズマリーを手に擦り込んだ後の足浴の血栓症予防効果について、長期臥床の患者でも科学的に検証する予定である。
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