本年度の目的は、平成26年度に得られた結果を基にして、災害時に黒のトリアージ・タグを付された傷病者 (以下、黒タグ者) に対応するためのシミュレーション・ツールを用いて、病院内の黒タグ者を収容するエリア(以下、黒エリア)での活動を想定した訓練の実施および評価を通して、実用化のための改良点を検討することである。 本年度は、災害拠点病院に勤務し、災害時には黒エリアを担当する看護師等5名を対象に、研究者が作成したツール(黒タグ者に対応するためのフローとシナリオ)を使って、黒エリアでのシミュレーション訓練を2症例実施した。症例1は単独遺体への対応(約20分間)で、症例2は家族同伴の遺体への対応および遺族対応(約30分間)とし、フローに沿って、黒タグ者1名を黒エリアへ搬送するとの連絡が入ったところから安置するまでを一連の流れとした。データ収集方法は、訓練状況の観察およびフォーカス・グループ・インタビューとした。 訓練の結果は、症例1が13分、症例2が25分で、予定より約5分短かった。実施項目は、「黒」であることの確認と状態の観察、看取り、死亡確認の立ち合い、所持品の確認、遺体の移動・搬送、プライバシー保護のための環境整備、本部への報告、遺族への情報提供、遺族支援などで、インタビューでは、「対応のイメージができた」、「丁寧な対応が困難」、「自身の感情コントロールが重要」、「正確な情報収集が重要」、「複数人で対応することが重要」、「検死に関連する知識の獲得が必要」などの意見があった。以上などから、作成したフローとシナリオによりシミュレーション訓練を行うことは、対応の流れをイメージすることができ、ケースに応じた遺体や遺族への適切な対応方法の検討手段となることが確認できた。今後の課題としては、一連の流れを把握できるようにツールの改良が必要と考える。
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