看護職者に求められる看護実践能力の1つである批判的思考態度に基づく、リフレクションを用いた教育的介入により、ストレスセルフマネジメント教育を実践し、その効果を検討することを目的とした。 調査対象は、臨床経験10年未満の病棟看護師20名としたが、介入期間を1~3ヶ月とした為、有効回答者は5名であった。調査内容は、独自に作成した自記式調査票および既存の心理尺度を用いた主観的評価と、唾液アミラーゼ活性値測定を用いた客観的評価とした。調査方法は、1ヶ月に5~10回程度ストレス場面を教示によるリフレクションをながら認知的再評価のプロセスを体験し、体験前後の唾液アミラーゼ活性値の変化をみた。認知的再評価のプロセスでは、ネガティブなライフイベント(ストレス場面)、自動思考、不合理な信念、根拠となる事実、矛盾する事実、考えのデメリット、自分を大切にする新しい考え方などを教示に従い記述してもらった。内的属性調査として、YG性格検査、SUBI(心の健康度&心の疲労度)等を用いた。 分析方法は、業務中のストレス場面で生じる自動思考と、場面における認知的評価の特徴を、帰納的分類法による内容分析し、心理尺度を用いた性格特性により差違を検討した。 その結果、YG検査による不安定消極型では、対人関係ストレスが多く、「感情的な決めつけ」「すべき思考・ねばならぬ思考」「マイナス思考」が特徴的に多かった。唾液アミラーゼ活性値は、認知的再評価プロセスの介入前に比べ介入後に上昇した。しかし安定消極型では、業務関連ストレスが多く、「全か無か思考」「根拠のない推論・結論の飛躍」が特徴的に多かった。唾液アミラーゼ活性値は認知的再評価プロセスの介入後に低下し、介入回数と共に介入前も低値の傾向を示した。個人特性により、批判的思考を用いた介入は、反ってストレッサーとなる可能性が明らかになり、性格特性を踏まえた介入の必要性が示唆された。
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