本研究の目的である教育と臨床における連携・協働システム(労働交換システム)の内容として、H26年度は①産後家庭訪問の計画・実施に大学教員が協力し、②大学における母性看護学演習に臨床助産師が協力した。H27年度は、これに加え、③助産師外来計画立案、④実習指導者育成のための教育プログラムを大学教員が実施した。 ①について、産後の母親のニーズを知るために、大学教員と臨床助産師で協働し、産後の母親を対象にアンケート調査を行った。その結果、出産施設の助産師による産後家庭訪問を希望する母親が74.4%と多かった。そこで、今まで実施していたクリニックでの訪問に加え、総合病院でも産後の家庭訪問を具体的に計画立案し、平成28年1月より総合病院の助産師と大学教員による産後家庭訪問が開始となった。②についてはH26年度同様、母性看護学演習(4時間×4日)に臨床スタッフが2名ずつ協力した。③について、助産師外来実施に向けた検討会議を実施し、具体的な対象基準、実施内容、料金設定等を検討し、H28年3月より助産師外来が開始となった。④については、大学教員が病棟の助産師15名を対象に臨床指導について講義を行った。 ①~④の取り組みにおいて、労働総時間は大学教員71時間、臨床助産師が48時間と明らかに大学教員の負担は大きかった。しかし、このシステムの狙いとしていた臨床現場の看護の質の向上、大学教員の実践力の維持・向上、臨床スタッフと教員の互いの人事交流による連携・協働とこれらの効果による専門職としての能力開発と新たな研究活動へと繋がったのではないかと考える。 今回、これらの実施したプログラムの内容とシステム全体の評価までは至らなかった。今後、それぞれのプログラムの効果についての評価し、システム全体としての今後の実施継続の可能性について検証が必要である。
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