本研究は、感染管理認定看護師のキャリア開発上の各段階(新人、一人立ち、中堅、熟達者)におけるコンピテンシー・モデルを開発することを目的とし、自記式質問紙による横断研究(調査1)と、インタビューによる質的記述的研究(調査2)による混合研究法を実施している。 調査1では引き続き、米国感染管理疫学専門家協会(APIC)による感染管理実践者のコンピテンシー10領域で構成されるセルフアセスメントツールをもとに作成した自記式質問紙のデータ分析を進めた。質問紙のコンピテンシー総得点合計を従属変数とし、感染管理認定看護師の属性および施設背景を独立変数とした重回帰分析では、コンピテンシーへの影響要因として「感染管理認定看護師経験年数」、「看護師経験年数」、「専従経験の有無」、「修士課程在籍以上」に有意な関連が認められた。コンピテンシー開発には専従感染管理担当者として経験を積み重ねることが最も影響し、大学院での学習もコンピテンシー開発に寄与することが示唆された。 調査2では平成27年度までに、調査1の質問紙に回答した感染管理認定看護師のうち、同意が得られた新人19名、一人立ち17名、中堅19名、熟達者10名の合計65名を対象に、半構造化面接を実施した。インタビューデータから研究対象者の行動特性を抽出し、各質問で同点数の人の行動特性を比較しながら、データ分析を進めている。キャリア段階が進むほど、感染管理実践に必要な知識や技術を獲得すると同時に、所属施設内だけでなく他施設・地域との関係構築により地域全体の感染対策を推進する能力を獲得している傾向が見られた。 今後の研究の展望として、専門家パネルを募り、デルファイ法を用いてコンピテンシー・モデル案の妥当性評価を行う。さらに、本研究で開発したコンピテンシー・モデルを感染管理認定看護師の卒後教育プログラム開発やコンピテンシー評価の指標作成に活用できるよう取り組む計画である。
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