本研究の目的は、看護教員と実習指導者が、臨床実習教育で直面する倫理的ジレンマとその対処について明らかにすることである。そこで、1)文献検討、2)プレテスト、3)本調査を行った。 1)文献検討:過去10年間の看護学実習における看護倫理の文献検討を行った。1次調査は287文献、2次調査はその中から58文献について、内容分析を行った。 2)プレテスト:看護教員2名、実習指導者2名にインタビューを行い、研究方法の洗練化を行った。 3)本調査:看護教員10名、実習指導者5名にインタビューを行い、質的記述的に分析した。(1)看護教員について:実習教育で看護教員が倫理的ジレンマと捉えた課題は、【看護教員役割と看護師役割を両立できない苦しさ】【看護教員としての教育に対する価値観のゆらぎ】【看護師としての看護に対する価値観のゆらぎ】に分類された。その対処は、『学生に指導』が最も多かったが、教育機関と病院施設との関係など考えるがゆえに、『何もしない』という対処もとっていたことがわかった。 (2)実習指導者:臨床実習指導で実習指導者が倫理的ジレンマと捉えた課題は、【看護師と実習指導者の役割両立の困難さ】【実習指導者役割を遂行する困難さ】【患者にケアが平等に行えない】に分類された。その対処は、『学生に指導』『スタッフ・病棟と協力・調整』『教員・学校と調整』『ケアの実施・サポート』『患者・家族への協力依頼』であったが、『何もしない』という対処もあったことが明らかになった。
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