研究課題/領域番号 |
25463384
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
神戸 美輪子 摂南大学, 看護学部, 教授 (70300316)
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研究分担者 |
細田 泰子 大阪府立大学, 看護学研究科, 教授 (00259194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 潜在看護師 / 育児休業 / 子育て世代 / 復職教育 / 復職準備 |
研究実績の概要 |
高齢化を背景に、潜在看護師の復職支援の動きが高まっている。看護師の多くは女性であり、出産・育児で年単位のブランクを有する者も多い。本研究は、そのような子育て世代の離職看護師に対する復職の準備教育の検討を行うものである。 平成28年度は【調査2】で1年以上のブランクを有し復職した対象者に対する無記名質問紙郵送調査を実施し、87施設、441名から回答を得た。有効回答は184名(41.7%)。全員女性で、平均年齢34.7±5.0歳、復職前の臨床経験は平均108.6±60.0ヶ月であった。ブランクは平均28.9±34.3ヶ月、ブランクの理由は出産・育児が173名(94.0%)で最も多かった。看護技術項目で、復職直後に「かなり大変」「大変」と答えた割合が高い項目は、「特徴的な処置の介助」64.2%、「特徴的な疾患・病態」56.9%、「医療事故防止」54.1%、「基本的な疾患・病態」51.6%で、現在では「特徴的な疾患・病態」33.7%、「特徴的な処置の介助」32.7%、「基本的な疾病・病態」26.2%、「医療事故防止」25.5%であった。復職からの期間で対象者を区切り、復職後1年未満者(n=121)、復職後半年未満者(n=81)、復職後3ヶ月未満者(n=60)、復職後2ヶ月未満者(n=37)で各々の復職直後と現在の困難感を比較した結果、復職後2ヶ月未満者の「特徴的な疾病・病態」を除く各々の復職期間において看護実践のすべての項目で有意差が認められた。 潜在看護師が復職直後に困難に感じていることは、疾患・病態の理解や特徴的な処置の介助だけではなかった。「医療事故防止」は経験があっても比較的困難感が高く、患者の安全を守る真摯な思いを抱いて復職に臨んでいることが推測された。復職後の職場定着と質の高い安全な看護を提供するためにも、フォローアップ研修や交流会など積極的に企画していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、病院看護部を対象としたインタビュー調査および質問紙調査から、復職準備教育の内容と方法を立案し、子育て世代の潜在看護師に対して復職準備教育を実施し、評価を得ていく予定であった。しかし、復職研修についてのとらえ方が対象者個々で曖昧であり、集合研修やOJT、指導体制など多方面にわたっているため復職教育の課題が明確になりにくかった。 そのため、復職を果たした当事者である復職看護師に対してさらに質問紙調査を追加実施し、どのような看護実践上の困難感があったか、どのような指導・相談体制で復職したか、研修というだけでなく、仕事に復帰した状況を明らかにする必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果から、復職を促進していくためには、復職研修をはじめとする教育的側面は重要な柱であるといえた。そして、その内容や時間、誰とどのように実施するのかについても、単に知識や技術を教えるという新人看護職員教育とは異なり、ピアエンパワメントを用いた成人教育としてとらえ、主体を復職看護師におきながら、組織的意図的に実施されることが望ましいと考えられた。 しかし、復職準備教育をとらえるときに、復職研修という限定的な枠組みではなく、看護師を迎える側の指導・相談体制や復職する看護師側の準備等の多様な要因があることも示唆された。 当初は介入研究として復職準備教育を検証する予定であったが、そのような側面をとらえるためには、原点に立ち戻り、復職がスムーズにいったと感じている看護師に対する丁寧なデータ収集の方が成果があるのではないかと考えた。 今後、そのような対象者/あるいは復職で困難をきたした対象者に対してインタビュー調査を行い、復職を成功させるための準備教育について明らかにしたいと考える。対象者は便宜的抽出法を用いて選定し、集合/個別の復職研修・復職時の指導・相談体制・ピアの存在・困難であった看護技術・組織風土の違いへの戸惑い等についてなどの側面から聞き取りと分析を行い、結果をまとめていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関は変更になったことに伴い、業務に慣れるための時間がかかってしまったことに加え、同居中の親の体調不良・会議に要する家事の時間が必要となり、研究時間が充分に取れなかったことによる研究の遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるため、今までの研究成果で不足しているデータを収集し、研究課題を統合する。また学会発表し、論文として投稿する。
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