本研究の目的は、災害時の神経難病療養者・家族の自助力を強化した避難行程モデルを作成することである。本年度は難病ケアに携わる保健・医療関係者、地域防災に取り組む自治会員等の意見をもとに、自助サポートマニュアル、避難支援システム案を作成した。自助サポートマニュアルに関しては、災害の種類により必要な支援、また活用可能な資源が異なること、障がいの程度・医療依存度・普段利用しているサービスの違い、在宅療養者の住む地域の特性などにより、個々の状況が大きく異なるため、汎用性の高いマニュアルを作成することが困難であることが確認された。そのため、今回は、災害の種類に関しては台風・集中豪雨等による水害とし、医療依存度の高いケースと医療的なケアは少ないが介護度の高いケースのマニュアルを作成した。医療依存度が高いケースに関しては、医療機器メーカーの作成している機器故障時の対策マニュアルや日頃から準備している非常用持ち出しセット等に加え、近隣住民との交流、避難先となる施設・病院との関係性の構築、定期的に外出経験など、これまでの災害への備えとは考えられていなかった内容も含めた。また、避難先については通院先の病院等が安全であるという結果になった。医療的ケアが少ないケースに関しては、介護の環境が整った老人保健施設が望ましいという結果となった。しかし、いずれも現在策定されている要援護者避難支援ガイドライン等に示されているように、医療施設への入院や介護施設へ直接避難できるという保障はなく、一次避難所を経て福祉避難所へ移動することとなっており療養者の身体への負担や移動に必要な支援者の確保、避難先での介護の継続の困難さなどの課題が残る。 避難支援システム案に関しては、難病療養者に関わりの多い市町村の保健師、訪問看護師、難病医療コーディネーター等の意見を聞き作成した。
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