研究課題
基盤研究(C)
本研究は、医療を要する療養者ケアの質指標として介護職と看護職の連携尺度を開発する。当該年度は、以下1~3を実施し、2カ年目以降に、4.連携尺度項目案の信頼性・妥当性の検証(看護職・介護職対象の質問紙調査)を行う。1.看護と介護の連携に関する概念整理・連携項目の抽出・精錬(文献調査):介護職による喀痰吸引等実施に関する法改正前の「看護と介護の連携」に関する研究動向・概念整理を行った。医学中央雑誌WEB版のキーワード「看護and 介護and 連携and 原著論文 and 2008-2013」で検索した466件のうち、看護・介護の用語が職種を意味する論文113件の研究領域は施設が最も多く56件、在宅は26件であった。職種間の連携関係を扱う論文は36件(うち在宅領域2件)であった。看護職・介護職の連携を構成する要素として、構造的要素(組織・役割・連携体制・情報管理)、プロセス要素(事前取り決め・実施協力・継続・人間関係)、アウトカム要因(目標管理など)の構成要素の示唆を得た。2.法改正後の在宅医療提供における課題分析:法改正前後の行政文書を比較した結果、法制化前は研修や医学的管理は患者との個別的関係によって責任体制が不明確なまま実施されていたが、法改正後は、一定の研修・組織的管理の下で医師の指示により実施され、医療職員との連携・安全管理・緊急時対応も明確になり、看護と介護の関係性も位置づけられた。3.連携項目の精錬と看護と介護の連携尺度項目案の作成(面接調査)看護職4名の面接調査、介護職8名のフォーカスグループインタビューにより、在宅における看護職と介護職の連携を構成する要素を質的帰納的に分析した結果、213の文脈から68項目の連携項目が抽出された。組織体制・連絡体制・役割分担・連携方法や効果的な連携のための活動・関係形成等に関する項目により、連携尺度項目案を作成した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、医療を要する療養ケアの質指標として介護職と看護職の連携尺度を開発する。研究計画は、1.看護と介護の連携に関する概念整理・連携項目の抽出・精錬(文献調査)、2.法改正後の提供体制における課題分析、3.1と2による連携項目の精錬と看護と介護の連携尺度項目案の作成(面接調査)、4.連携尺度項目案の信頼性・妥当性の検証(看護職・介護職の質問紙調査)を行う。当該年度は、1~3を実施した。1について、介護職が一定の要件下により喀痰吸引等の実施ができることになった社会的状況を踏まえて、近年の「看護職と介護職の連携」に関する研究動向および概念整理を行い、計画通りに進展している。3.看護と介護の連携尺度項目案の作成では、1と2における先行文献および行政資料に基づく「看護職と介護職の連携」の構成要素を参考としながら、面接調査結果を質的帰納的に分析した。これにより、次年度に実施する4.連携尺度項目案の信頼性妥当性の検証(質問紙調査)のための項目の作成に至り、計画通りに進展している。
平成25年度の成果である在宅における看護職と介護職の連携に関する概念整理については、論文投稿をする予定である。【平成26年度】平成25年度に作成した「医療を要する療養者支援における看護職と介護職の連携尺度案」の項目について、統計的な精錬(尺度の信頼性妥当性の検討)を行い、連携尺度を完成する。訪問看護師・訪問介護職員(各1000名程度:無作為抽出)を対象とした自記式質問紙調査(郵送法による配布、回収)により、医療を要する療養者支援における看護職と介護職の連携尺度案による連携状況に加えて、看護と介護の連携に関する主観的評価等を調査する。連携の実態の記述統計および連携尺度項目案の因子分析による構成概念妥当性等の統計解析を行い、連携尺度を完成する。【平成27年度】平成25-26年度の段階を経て開発する「医療を要する療養者支援における看護職と介護職の連携尺度」を用いた連携実態調査を行うことにより、平成24年4月の「社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正」による新たな医療提供体制の移行期としての連携実態と課題・安全かつ円滑な医療提供の実現に向けた今後の方策を検討する。更に、連携の状態に影響する要因・効果的な連携によるアウトカム評価の検証のために必要な資料を得る。研究方法は、訪問看護事業所管理者・訪問介護事業所管理者各 1000名程度を対象とした自記式質問紙調査である。開発する連携尺度による連携実態に加え、医療処置を要する療養者支援における看護職または介護職との連携の経験、連携を良好に行うための課題および工夫、連携の効果としての経験等について調査し、連携尺度の回答を従属変数として、連携に影響を与える要因・連携の効果について統計解析を行う。以上により、ケア提供の質を測定する尺度を開発することによって、ケアの質の可視化や比較、療養環境等との関連性の検討・ケアの質評価等に寄与する。
次年度使用額が生じた費目は、「旅費」「人件費」である。面接調査に協力してもらうことができた対象者が、比較的近隣地域であったことから、旅費が当初の予定額を必要としなかった。「人件費」については、面接調査内容のテープ起こし作業等の業務のために予定していたが、面接調査内容のボリュームが大きく、急遽、業者委託により行ったためである。次年度の計画では、当該年度に作成した項目案を用いて全国調査を実施する予定である。当該年度に作成した質問紙項目が想定より多く、そのためのデータ入力作業等が発生するため、この作業について「人件費」を使用する予定である。
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日本難病看護学会誌
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Acta Neuropathologica Communications
巻: - ページ: -
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臨床神経学
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日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
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