慢性疾患の増加に伴い,食事・栄養指導を必要とする患者は増加し,指導における看護師の役割は大きい。しかし,患者個々の食事摂取内容・量に基づく個別的な指導は十分に実施されていない。臨床看護師が適切な食事指導を実施するためには,患者の食事内容・量を正確に把握し,栄養評価する能力が求められる。看護師の中には,食材の測定や栄養価計算体験のないものも多く,患者の食事内容を十分に把握できていないことも考えられ,患者が主体的に食事管理できる具体的な指導が不足する要因となっている。そこで,食品重量の目測,栄養価計算の体験を通して,測定値と実測値の誤差,食品・栄養素摂取量測定体験の必要性の認識を明らかにし,臨床で食事指導に関わる看護師の食事指導力強化とその課題を検討した。 臨床看護師21名,栄養学専攻学生18名を対象に調査用に準備した食事について,1.食品重量の目測,2.目測した食品重量に基づいた栄養素摂取量計算,3.食品重量・栄養素摂取量の実測値と目測値の比較,4.臨床における食品・栄養素摂取量測定の体験頻度・必要性・活用性の認識の調査を行った。臨床看護師に対しては,半年後に食品・栄養素摂取量測定の実施頻度と体験の必要性・活用性,指導力強化のために今後取り組みたいことを調査した。 臨床看護師群と栄養学生群で比較したところ,看護師群のほうが油の目測量が多く,エネルギー摂取量の目測も多かった。両群とも多く見積もることが多く,調味料でその傾向が大きかった。臨床看護師の食事摂取量測定・栄養価計算の実施は調査前・半年後とも少なかった。自身の食生活の振り返りの必要性は半年後も認識しており,7割以上の看護師が食事指導力強化の必要性を感じていた。食物の目測体験は,看護師の食事指導の知識を高め,食事指導に活用できる等の意見があった。今後,治療食の栄養価計算など,体験学習の機会を定期的に設けることが課題である。
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