本研究の目的は、「手術を受けた肺がん患者の身体経験を手がかりとした看護介入モデル」を活用したケアプログラムを開発することである。 手術を受ける肺がん患者にかかわる看護師が抱える困難や課題をグループインタビューにより抽出した。そして、外来、手術室、病棟それぞれに、周手術期の肺がん患者に行う看護ケアの内容として、【手術に向けての準備】【患者と医師の関係構築の調整】【納得して治療に臨む支援】【術後合併症予防】【長期化する疼痛のコントロール】【退院後を見通し日常生活を整える】【身体への影響を最小限にする】【連携を保つ】などを現場の看護師とともに整理した。そして、身体的・心理的側面から手術への体制を整え、退院後の生活を見通しながら主体的に患者が行動できるように支える内容を含むケアプログラムとした。これらは、新しいものではないが看護師の意図を持って実施することにより、看護師がかかわる場が違っても一貫して、周手術期の肺がん患者の回復を促進し、退院後の生活マネジメント、さらにはQOLの向上につながると考えられた。 また、このケアプログラムを活用するためには、短い関わりの中で、看護師が援助の必要性を認識し、意図的に介入できるようにするための学習ツールを考案した。看護師は、気づきや予測、ギャップを感じることから患者の個別的な状況に注意を向けることから、周術期にある肺がん患者の身体の捉えや反応を手がかりとして、看護師がその状況をどう理解し、患者主体の目標を考えながら、思考し介入するかを整理し、スクリプト化した。スクリプト化により、初学者から患者の体験に基づき連続性を持って看護ケアを展開する能力の育成が可能となり、看護実践能力の向上にも役立つ可能性がある。
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