慢性心不全は急性増悪を避けることは難しく、いかに重症化する前に気づき、また症状をコントロールしながら生活していくかが重要である。しかし、自覚症状は患者個々によって感じ方が異なる。本研究では、患者自身が心不全の症状において、どのような体験をしているのかという、急性増悪に至るまでの慢性心不全患者の身体感覚の様相とその解釈を明らかにし、保健行動へとつなぐことができるガイドライン開発を目的とした。本学および研究対象施設の倫理審査委員会の承認を受けた後、研究対象施設の責任者あるいは看護部門責任者に研究の概要等について口頭および文書を用いて説明を行った。承諾を得られた研究対象施設から対象となる慢性心不全患者を紹介いただき、研究参加の意思確認を行い、同意が得られた研究対象者にインタビューガイドに基づき、半構成的面接法を用いてインタビュー調査を行った。 データ分析の結果、慢性心不全患者は急性増悪に至るまでには、通常とは明らかに異なる違和感を自覚していた。一度心不全症状を経験することによって日々の自分自身の身体の声を聴き、その日の体調を自分自身と相談することで一日の生活ぶりの段取りをしていた。また、活動の際には自分自身の身体への感度を高めることによって敏感に変化を感じ取っていた。 また、慢性心不全患者がこのような身体感覚に対して、自分自身に合った対応行動を見つけるまでには、発症から1年~3年が必要であることが語られた。このことから、日常生活の中で身体感覚とそれに適した行動を試しながら生活する様子が示唆された。この結果から、慢性心不全患者が身体感覚の解釈とそれに対する対応行動、またそれに基づいた保健行動へとつながるガイドライン作成に取り組んでいる。
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