1.慢性疾患をもつ人の健康感を捉える尺度(元気感,病い感)の妥当性と信頼性を検討 元気感と病い感の妥当性と信頼性の検討を研究目的とし,自記式質問紙に回答できる65歳以上の糖尿病患者300名を対象に調査を行った.元気感は“病気をもちながらも気力や活力があり,自分なりに活動できるという感覚”であり,病い感は“病気そのものあるいは病気に関連する苦痛や苦悩があり,病気である病人であると感じる感覚”と定義した.これらの尺度とSF-36,個人属性などの質問項目で調査を実施した.その結果,194部(有効回答率64.7%)を対象とした.第1主成分の寄与率は元気感75.9%,病い感70.0%であり,SF-36との相関係数は元気感0.51,病い感-0.61となり予測した概念間の関係と一致した.α係数は,元気感0.93,病い感0.92,再検査法による相関係数は元気感0.82,病い感0.71となり各尺度の妥当性と信頼性が支持された. 2.縦断調査 自記式質問紙に回答できる30歳以上の糖尿病患者200名を対象とし,縦断的に調査を行った.測定尺度には,申請者が開発した元気感と病い感と食事療法にかかわるつらさ尺度,調査票は,元気感,病い感,つらさ尺度,症状や療養行動に関する20項目,個人変数6項目である.検査データや病状は,血糖値,HbA1c ,LDL,中性脂肪,尿糖,尿たんぱく,尿アルブミン,eGFRなどの24項目である.調査方法は,ベースラインから1年間,対象者が外来を受診するたびに元気感および病い感の尺度値,血糖コントロールの状況(血糖値,HbA1cなど)および療養指導の状況を調査した.分析方法は,施設によりデータにばらつきがないかをt検定およびχ2乗検定で確認し,尺度値の経時的変化は分散分析,尺度値と検査データとの関係は相関係数を用いて分析した.現在,一部調査中の施設もあるため,回収が修了次第分析を行う予定である.
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