研究課題/領域番号 |
25463459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
松田 千春 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (40320650)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ALS / 口腔ケア / 気道浄化 / 自動吸引システム / 口腔症状 / 神経難病 |
研究概要 |
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)人工呼吸療養者の口腔の問題に特化した気道浄化に関する看護法を開発し、支援法を体系化することである。そのため、1.特徴的な口腔症状、2.唾液の垂れ込みが多い療養者に高い効果が期待される自動吸引システムの成果と課題、の2点について明らかにするため検討し、初年度は以下の成果を挙げた。 1.在宅ALS人工呼吸療養者の口腔症状の出現傾向と看護ケア法に関する課題の抽出;1)神経専門病院の対象35例について看護職への聞き取り調査を行い、口腔症状の出現割合を確認し、流涎過多、開閉口困難の症状を約5割に認めた。そのうち13例の2010~2013年の口腔症状を経年比較すると、咬舌、流涎過多の症状が緩和している例があり、追跡調査と要因分析の必要性が示唆された。2)発症から人工呼吸器装着後2年7か月~8年5ヶ月にある5例の対象の療養経過における口腔症状の出現傾向を整理し、気管切開下人工呼吸導入2年前後に唾液処理が極めて困難な状態をきたすことが明らかとなった。3)18例の対象の口腔ケアで生じる課題を整理し、在宅療養においては誤嚥防止策がとりにくいことが明らかとなった。4)3例の重度な口腔症状を呈する対象に対して歯科学的検討・介入調査を行った。口腔に重篤な問題を抱える療養者においては歯列偏移や舌肥大が示され、口腔管理法について検討中である。 2.低定量持続吸引可能な自動吸引システムの成果と課題に関する検討;1)2例の長期実施者の課題と対応法について詳細に検討した。24時間以上の中断なく継続できている背景には、十分な気道ケアと安全管理について実施できていることが確認され、安全な支援法の普及のためにはケア法及び管理について体系化することが必要である。2)本システム実施の成果については、使用経験のある医療職及び患者・家族に質問紙を送り、現在集計中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALS人工呼吸療養者の特徴的な口腔症状として、流涎過多、開閉口困難が高い割合で認められることが明らかとなった。これらの口腔症状の出現傾向については、臨床経過の追跡を実施したことで、口腔症状の変化とALSの症状との関連性について推定できた。また、唾液の垂れ込みの多い療養者に効果が高いことが期待される低定量持続吸引が可能な自動吸引システムの成果と課題に関しては、使用経験のある医療職、患者、家族に質問紙による郵送調査を行っており、現在集計中である。この結果によって、本システムに効果がある療養者の状態が明らかとなり、課題についても整理されると考えている。 一方で、口腔症状の出現傾向について歯科学的検討を行うにあたり、在宅療養であること、開口できない症状をもつこと、等の理由から実施可能な検査法が極めて限られ、十分な検討を行うには至らなかった。また、在宅療養においては、個別性の高いケアが実施され、支援体制によっても口腔ケア頻度が異なり、それら背景を十分に考慮し、分析するには至らなかった。よって、これら課題解決のために口腔症状評価のための機器の試用やケア頻度が一定条件で行われている病院対象者に調査ができるよう、準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
ALS人工呼吸療養者の特徴的な口腔症状に関して、出現傾向を明らかにするため、在宅人工呼吸療養者の口腔症状に関して経年的調査の継続する。また、病院対象として、神経難病人工呼吸療養者の口腔症状を調査し、統計学的に分析する必要性がある。なお、歯科学的検討を行った上で介入調査を行い、口腔症状を重篤化させない方法を見出すことが本研究の目的ではあるが、現在実施できる検査法は極めて限られ、十分な評価が困難となっている。よって今後は、口腔評価のための新たな機器の試用や、客観的評価法の検討を行う。また、在宅療養においては、口腔ケア時に十分な誤嚥防止策をとれず口腔ケアの実施を妨げていることが明らかとなり、今後は口腔ケアを困難とさせている要因について実態調査をすすめ、その問題点を整理し、長期的に安全に口腔ケアが実施できること、すなわち安全で効果的な気道ケアにつながるための対策について検討していく。低定量持続吸引可能な自動吸引システムに関しては、質問紙の集計結果をもとに、ALS人工呼吸療養者への適応を確認し、成果と課題を整理する。なお、改良点については開発者に返し、看護支援のあり方について体系化していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
質問紙による郵送調査の発送および回収が年度をまたぎ、郵送代などの費用分配が次年度に持ち越した。26年度の予算として、これら質問紙の回収のための郵送費用に一部該当する。また、25年度調査により、病院対象の調査が新たに加わる必要性があると判断し、26年度の調査に関する費用を繰り越した。 質問紙による郵送調査の回収および入力等の人件費や統計処理等のための費用とする。また、26年度研究計画の中に病院対象による口腔症状および口腔ケアに関する実態調査の項目を新たに設け、この調査費用とする。
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