研究課題/領域番号 |
25463475
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
薬師神 裕子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10335903)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | e-メンタリング / 小児1型糖尿病 / 糖尿病自己管理行動 / メンター / メンティー |
研究概要 |
本研究の目的は、小児1型糖尿病を対象とした既存のメンタリングプログラムを、小児糖尿病患者のニーズに合わせてさらに発展させ、その効果を検証することである。今回の研究では、発症後2年以内の小児1型糖尿病患者を対象とし、発症初期の患者が糖尿病自己管理行動を効果的に学習できるメンタリングプログラムを作成した。 まず、メンタリング専用のホームページ上に、メンターとメンティーがいつでも情報交換できるシステムを準備した。このシステムは,①糖尿病自己管理に活用できる小児1型糖尿病の知識や小児糖尿病サマーキャンプの情報に関するコンテンツと,②メンティーとメンターが双方向で自己管理行動に関する相談や情報交換などを行うメンタリングに関連したコンテンツの2つから構成されている。自己管理行動に関する相談や情報交換などのメンタリングに関するコンテンツには,メンティー個人の専用ページを作成し,日々の糖尿病自己管理行動に関する疑問や悩みなどを記入できる。一方、メンターは,メンティーが記入した内容に、励ましや指導などのコメントを送ることができるシステムである。メンター及びメンティーの通信手段には、タブレット型端末であるiPad mini を使用し、専用ページへの書き込みや閲覧は,IDとパスワードを入力して行うものとした。メンティーの専用ページにはメンターだけでなく,研究者,主治医(必要時)が閲覧できる機能とし、医療者からの相談体制が得られる仕組みを考えた。 すべての情報通信はSecure Sockets Layer (SSL)でやりとりを行い,外部からの情報検索等を不可にし通信路をセキュアに保つことや、システムに登録された研究参加者のデータは,各個人のID・パスワードによって,該当するデータベースに登録・格納されるシステムとし、個人情報の保護が確実にに行えるシステムとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的は、小児1型糖尿病患者の個別性やニーズに合わせた教育プログラムに発展させ、メンタリングシステムを整えることであった。初年度は、Information Communication Technology (ICT)を活用したe-メンタリングシステムをまず整備することを目標として研究を実施した。ICTを活用する研究であることから、患者の個人情報保護を確実に行えるシステムとすること、また、小児を対象とする研究であることから、小児へのインフォームドアセントの方法について、以下の①~⑥について検討した。 ①システムを設置するサーバーのセキュリテイの確保(ファイヤーウオール,検疫ゲートウェイ)とウイルス感染対策の確認、②すべての情報通信はSecure Sockets Layer (SSL)でやりとりを行い,外部からの情報検索等を不可にし通信路をセキュアに保つこと、③データベースは,各個人のID・パスワードによって保護され,メンタリング活動期間の情報交換は,メンティー,メンター,研究者及びメンティーの主治医(必要時)の許可された者のみに限定し,ID・パスワードによる閲覧制限を強化すること、④iPad miniは最新のiOSをダウンロードし,セキュリティアップデートを必ず行うこと、⑤万一紛失や盗難にそなえて、遠隔操作でロックしたり,端末内の個人情報を削除し,個人情報が流出しないよう厳重に管理する、⑥インフォームドアセントについては、小学校低学年用、小学校中高学年用、中学生用の3種類を用意し、子どもの理解を十分得られるようなアセント用紙を作成した。 今年度の研究目的としていた、セキュリテイの高いe-メンタリングシステムが整備され、今後、本システムを活用した小児糖尿病患者への教育的介入ができる準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究の推進方法として、以下の内容を計画している。 1.介入研究の実施期間:平成26年8月~平成27年8月(e-メンタリングシステムの稼働期間)。 2.研究対象:糖尿病発症後2年以内の9歳から18歳(小学3年生~高校3年生)の1型糖尿病患者(メンティー)8名程度と,小児期に1型糖尿病を発症した20歳~25歳の患者(メンター)4~5名程度。メンターとメンティーのマッチングは,2人のメンティーに対してメンター1人の組合せを基本とし、メンティーの発達段階や性別を考慮し,たマッチングを行う。サマーキャンプの主催者である「ファミリーの会」の責任者に研究協力を依頼し,小児1型糖尿病患者とその保護者及び青年期患者に研究の趣旨と概要を説明する。 3.研究方法:メンティーは専用ホームページ上で,日常生活で遭遇する自己管理行動の課題をメンターとともに振り返り,課題に対する具体的な解決方法を学習する。また,メンティーの日常生活で生じる自己管理行動に伴う悩みや疑問をメンターとともに解決していく。メンターが行うメンタリングの基本姿勢としては,「情報的サポート」「肯定的サポート」「情緒的サポート」の3つのサポート方法を活用してメンティーと関わる。使用する通信手段は、タブレット型端末であるiPad (米アップル社)をメンター・メンテイー双方に貸与し利用する。専用ホームページへの書き込みや閲覧は,個人に配布したIDとパスワードを入力して実施する。 4.分析方法:本研究における教育プログラムの効果の測定には,①属性,②糖尿病セルフケア行動尺度,③セルフケアに関する糖尿病自己効力感尺度,④メンタリング尺度,又は,⑤The Match Characteristics Questionnaireから構成される自記式調査票を用いる。なお,プログラムの効果測定は,メンタリング開始前,1か月後,6か月後,12か月後に実施し評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、e-メンタリングシステムを構築し、専用ホームページの作成準備に取り掛かったが、ホームページを実際に稼働させるためには、ホームページの構成内容についてさらなる検討が必要である。専用ホームページには、メンタリングに関する内容だけでなく、小児糖尿病に関する病態、インスリン注射や血糖測定の手技、食事や補食の摂り方などに関する情報や小児糖尿病サマーキャンプに関する情報提供なども行い、小児糖尿病患者が自身の病気に関する多様な情報を獲得できる内容としていく予定である。 平成25年度に繰り越しされた金額は、ホームページに掲載される小児糖尿病自己管理に関する情報や、糖尿病の病態・インスリン注射の方法、血糖測定の方法、食事や補食の摂り方、小児糖尿病サマーキャンプに関する情報を追加するために必要なホームページの更新・作成費用に充当する予定である。
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