研究課題/領域番号 |
25463477
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
永橋 美幸(荒木美幸) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10304974)
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研究分担者 |
西谷 正太 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50448495)
大石 和代 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00194069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オキシトシン / 胎児愛着 / 初産婦 |
研究実績の概要 |
研究目的の1つである「妊娠期の胎児愛着形成促進法によるオキシトシンの変化」について明らかにするために一般産科クリニックに通院中で,単胎かつ経過が順調である初産婦50名を対象とし研究を行った.<方法>妊娠36週の妊婦健診にて記録シートを渡し,1週間に渡り妊婦自身が行った腹部へのタッチング回数,腹部緊張によるタッチング回数,腹部への話しかけ回数および妊婦の睡眠時間を毎日記録していただいた.加えて,胎児愛着尺度(PAI)について調査を実施した.翌週の妊娠37週の妊婦健診時,唾液オキシトシン(OXT)の採取を行うとともに,年齢,出産予定日,初覚胎動時期,就業状況,タッチング方法,タッチング理由,胎児愛着尺度(PAI)に関する調査を行った. <結果>同意が得られた49名のうち8名を除外し,有効回答41名を分析対象とした(有効回答率82.0%).平均年齢は30.1歳±5.1歳,初覚胎動時期は平均19週0.9日±17.7日であった. 1.腹部へのタッチング頻度と胎児愛着については腹部へのタッチング頻度とPAI(p=0.001),胎児への話しかけ頻度とPAI(36週)(p=0.016)との間においてそれぞれ有意な正の相関が認められた.さらに,PAI(36週)とPAI(37週)との間には有意な相関が認められ(p=0.000),有意ではないものの平均1.2点増加していた(p=0.137). 2.腹部へのタッチング頻度と唾液OXT濃度については唾液採取量不足のため8名を除外し,33名について唾液OXT濃度の分析を行なった平均OXT濃度は35.9±15.0 pg/mLであり,腹部へのタッチング頻度と唾液OXT濃度との間に有意な正の相関が認められた(p=0.025).胎児への話しかけ頻度と唾液OXT濃度との間には有意な関連は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、妊娠期と産褥期の唾液オキシトシンの濃度と胎児、新生児への愛着の関係について調査を行ってきた。分娩期の唾液オキシトシンの測定については、5例のプレ調査を行った結果、唾液オキシトシンの濃度は妊娠期とかわらないことがわかった。さらに胎児愛着促進法の中でも、腹部へのタッチングの頻度は、唾液オキシトシンの濃度と関係することがわかった。一方、話しかけるという行為については、唾液オキシトシン濃度と関係しないことがわかり、「タッチング」という行為は唾液オキシトシンを増加させ、胎児愛着を促進することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、1.妊娠期のオキシトシン濃度と胎児愛着との関連、2.産褥期の授乳前後のオキシトシンの推移と胎児愛着との関連、3.愛着形成促進法とオキシトシン濃度との関連について研究実施した。愛着形成促進法の一つであるタッチングについては唾液オキシトシン濃度との関連が示唆されたため、妊娠期のタッチングと胎児愛着尺度の変化について調査する予定である。これらの研究の成果については、学会発表し、論文作成、投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、妊娠期、分娩期、産褥期のオキシトシンの推移について調査する予定であったが、分娩期の唾液オキシトシン濃度の測定のプレ調査を行った結果、妊娠期とかわらないことがわかった。さらに分娩期の唾液採取は昼夜一定しないため、日内変動等を考慮すると妊娠期、産褥期との推移を調査するには限界があった。よって分娩期の唾液オキシトシンの測定は継続せず、終了することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
妊娠期のタッチングの推移と胎児愛着尺度の変化について調査するとともにこれらの研究の成果を、学会発表し論文作成、投稿予定である。
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