研究課題/領域番号 |
25463482
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
桑名 佳代子 宮城大学, 看護学部, 教授 (70154531)
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研究分担者 |
山岸 利次 宮城大学, 看護学部, 准教授 (50352373)
桑名 行雄 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 教授 (90258848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 要保護児童 / 里親 / 児童養護施設 / 社会的自立 / 健康教育 / 月経教育 |
研究実績の概要 |
【1】「要保護児童の家庭養護における親役割獲得と支援に関する研究」の分析を進め、平成27年2月14日に開催された「第1回日本フォスターケア研究会」(主催:日本フォスターケア研究会・公益財団法人全国里親会)において、「里親家庭における親子関係と親の心理的ストレス反応に関する研究」として発表した。 【2】児童養護施設における社会的自立への支援となる施設内ケアの在り方と健康教育プログラムを検討する事前調査として、A児童養護施設において、女子中学生に対する月経の健康教育を2回実施した。施設長に対し、倫理的配慮を明記した説明書と依頼書で説明し、同意書に署名を頂き、対象者はポスターで呼びかけ自主参加とした。実施前後での質問紙調査は無記名とし、名簿管理は施設看護師に依頼した。2回ともに健康教育に参加し、質問紙調査に回答した5名について、参加観察と質問紙調査の結果から、月経に関する知識理解の向上、月経に対する否定的イメージの低下、参加者の自由な発言と交流が認められた。家庭の代替機能をもつ児童養護施設においては、施設職員が日常生活の関わりの中で月経教育を行う必要性と、その土壌を培うための職員と子ども達を対象とした健康教育のあり方が示唆され、今後の研究推進の方向性を見出した。 【3】社会的養護の研修会を2回開催(10月4日、2月28日)した。社会的養護を実践する立場からの座談会、社会的養護を経験した立場による座談会を企画・運営し、自立支援における課題の明確化を図った。この研修会は、児童養護施設関係者、里親、本研究代表者・分担者からなる「こどもの夢ネットワーク」の活動である。さらに、本ネットワークでは、「児童養護施設退所者における社会的自立の支援に関する調査研究」の結果を基に、自立支援を実践する拠点として、平成27年3月22日に「夢歩(ゆめっぽ)」を開所した(2015.3.28 河北新報記事)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究Ⅰ」として計画していた「初めて委託を受ける養育里親の親役割獲得と親子関係形成過程の縦断的研究」については、今年度の第1回日本フォスター研究会において発表した結果から、里親の親役割獲得と親子関係は、里親登録の動機や里子の特徴(年齢、発達上の障害など)、実子の有無等により個々の違いが大きく、非常に複雑であることが明らかであった。研究対象者の確保困難、倫理的配慮の難しさとともに、一般化には難しいテーマであり、本研究期間に成果を出すのは困難と判断した。 「研究Ⅱ」、「研究Ⅲ」について、児童養護施設における健康教育の事前調査や研修会など、現在までの実績を踏まえて研究計画を見直し、今後「研究Ⅲ」に焦点を当てて進める方針である。
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今後の研究の推進方策 |
「研究Ⅱ」として予定していた「社会的養護における養育体験と社会的自立に関するインタビュー・質問紙調査」は、すでに実施した「児童養護施設退所者における社会的自立の支援に関する調査研究」を詳細に分析し、さらに研修会での社会的養護の経験者による座談会などで課題が明らかとなってきていることから実施を見送り、「研究Ⅲ」に早急に取りかかりたい。 「研究Ⅲ」では、児童養護施設における職員(児童指導員・保育士・看護師)を対象として、子どもの自立支援を視野に、家庭・親役割の代替を担うことに関する役割認知、困難さ、ストレス等と、子どもの自立を意図した取り組みの実態を把握するための質問紙調査を実施したい。この結果を踏まえて、子どもの発達に合わせた自立支援につながる施設内ケアと健康教育プログラムを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、里親両親、施設退所者・里親家庭からの自立者を対象としたインタビュー調査への協力謝金と資料整理等の人件費として約300,000円を計上していたが、計画変更により使用しなかった。また、全国里親会事務局がある東京都港区への打合せ旅費を約100,000円としていたが、メール・電話を活用した。また、物品費を約200,000円計上していたが、健康教育の事前調査を中学生女子の月経教育に焦点を絞ったことから約100,000円と半額の支出となった。また、本研究における学術集会参加費のうちの約50,000円が未使用であった。そこで、本年度の未使用額は約550,000円となった。 以上より、昨年度の繰り越し額の約200,000円と合わせて、約750,000円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画を変更することにより、繰り越して使用したい。インタビュー調査を予定していた児童養護施設の職員を対象とした調査は、質問紙調査として周辺県の14施設に研究協力を依頼する予定である。そこで、研究協力打合せ、調査旅費、印刷費、通信費として、また資料整理・データ入力作業等の人件費として使用したい。
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