母子家庭訪問の質を保持・向上する対策の1つとして、訪問員のだれが訪問を行っても母親の期待する支援を適切に提供できることがあると考えた。そこで、本年度は訪問員への支援のあり方についての検討を目的とし、訪問事業所における訪問員へのスキルアップ研修の実態と訪問員の訪問に際しての困難感を明らかにした。 対象者は市区町で新生児訪問と乳児家庭全戸訪問に従事している310人で、職種は看護師3.6%、保健師31.6%、助産師64.8%であった。訪問事業所で研修会やケースカンファレンスがあると回答した訪問員は、それぞれ74.2%、41.9%で、年間の開催回数の平均(SD)は2.6(2.4)回、18.4(28.9)回であった。ケースカンファレンスを行っている事業所は半数以下で、開催回数は訪問事業所による差が大きく、事業所における訪問員のスキルアップに向けた支援は十分とは言えない状況であった。 訪問員の訪問に際しての困難感として、1)メンタルヘルスにおけるリスクアセスメントについての困難感、2) 訪問対象と職場や他施設とのコミュニケーション力・連携についての困難感、3) 児の栄養・授乳支援についての困難感、4) 地域子育て支援サービス情報提供についての困難感、5) 育児技術の伝達についての困難感の5つが抽出された。このうち訪問員の困難感が最も高かったのは、「メンタルヘルスにおけるリスクアセスメント」であり、特にこの困難感が高かったのは、経験年数5年以下の訪問員と特別区と市の訪問員であった。「児の栄養・授乳支援」、「育児技術伝達」の困難感については、保健師・看護師の困難感が助産師より高かった。 以上のことから、訪問員のスキルの一定化を図るためには、訪問員の職種別研修の必要性、管轄地域の地区診断を行い、住民の抱える問題の把握を行ったうえで、訪問員研修の内容を検討していく必要性が示唆された。
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