研究課題/領域番号 |
25463490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
坂梨 薫 関東学院大学, 看護学部, 教授 (60290045)
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研究分担者 |
勝川 由美 関東学院大学, 看護学部, 准教授 (20438146)
水野 祥子 関東学院大学, 看護学部, 助教 (60728179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 産後ケアセンター / 産後早期 / 育児生活 / 育児支援 |
研究概要 |
本邦において子育て支援の一環として産後ケア事業を行う行政が増加している。産後ケアセンターを利用した韓国の母親の退所後の育児生活や意識の現状と本邦の産後1ヶ月の母親の育児生活に及ぼす要因を探ることで、産後早期からの子育て支援の基礎データを得る目的で調査を行った。韓国では産後ケアセンター5施設に入所した母親480名、本邦では1施設における1ヶ月健診時の母親383名を対象とした。韓国での有効回答数95票、本邦の234票を比較分析した。結果、初産婦の平均年齢は双方共に30歳以上であった。精神的健康は本邦の母親が有意に安定しており、産後の手伝いは夫、実父母全てにおいて本邦が有意に多かった。本邦で皆無であったハウスキーパーへの依存は韓国では29.5%であった。1ヶ月の母親の育児生活や意識の現状の質問項目を分析した結果、第1因子“心身の休息”第2因子“母親になった満足感”第3因子“パートナーへの敬意”第4因子“育児への自信”第5因子“時間的調整”第6因子“欲求への対応”が抽出され、第2因子は韓国の母親が有意に高く、第1因子、第4因子、第5因子は本邦の母親が有意に高かった。韓国の産後ケアセンターは母親の産後の養生が主目的であるため、育児能力をつけて退所するという母親が少ないのではないかと推察できた。一方、本邦の母親は母親になった満足という感情の表出は明確ではないにしても、児への対応が安定しているのは、産後実家で過ごし、身近で夫や実父母など安心して心身を委ねられる肉親からの支援を受けていることが精神的に安定に繋がり、育児生活に影響していると考えられた。しかし、手伝いがなく、育児不安を抱いている母親にとって、今般行政で行われている産後ケアセンター事業の存在は価値あるものといえる。肉親によって続けられる支援には限界が考えられることから、産後ケアセンター事業の継続の必要性が改めてわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画は、周産期の現状や社会的背景が類似している韓国で行われている、産後ケアセンター利用者と本邦の出産後の母親の育児生活の現状や支援者の状況、子育て中の精神的変化などを比較することで、産後早期の支援のあり方を考察する事であった。 韓国での調査回収率は低かったが、分析できる95票の有効回答が得られ、韓国と本邦の産後1ヶ月の育児生活の現状が明らかになった。本邦と韓国の有効回答を各々分析し、本邦と韓国の現状と特徴を明らかにしたので、分析結果を学会で発表する予定である。2013年度の計画は達成した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目は産後1ヵ月程度の母親の育児生活状況を把握したが、2014年度はカナダのファミリーリソースセンターの視察を行い、地域の中でどのような支援が行われているか実際に把握し、本邦の子育て支援の参考としていく。視察においては、既にカナダのトロント、バンクーバーのコーディネーターと調整している段階である。また、視察メンバーとして、行政の子育て支援の担当課長、家族支援のNPO団体メンバー、地域の子育て支援会メンバーなど子育て支援に関わる人々が同行予定となっている。2014年度は、2013年度の調査結果とカナダ視察の報告会を行い、産後早期の子育て支援と地域における継続的支援のあり方についてディスカッションしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
韓国での調査費用と調査対象者へのお礼品の金額が予算より節約できたため、前年度の繰越金が発生した。科研申請時に計画した2014年度研究を施行するために必要な助成金である。 カナダのファミリーリソースセンターを行政・NPOメンバー、地域子育て支援会、研究分担者と共に視察する旅費、現地でのコーディネーターへの謝金、通訳代などに使用する。また、視察後の研究会開催の会場費、講師謝金その他に使用する。
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