当研究の全体構想は、小児医療におけるプレパレーションのさらなる普及にむけたシステムを構築することである。プレパレーションの主たる実施者である看護師において、プレパレーションが必要という意識をもっているにも関わらず、十分実施することができない実態が報告されている。そこで、我々は先行研究においてそのずれに関連する促進要因と阻害要因、および各要因の構成要素とその対策を明らかにした。そのうち、ずれに強い関連性が確認された阻害要因『実施に対する自信のなさ』では、<プレパレーションの方法がわからない><プレパレーションツールがない/作成する労力や購入費用がない>など4つの構成要素が、対策として≪看護師自身が「成功体験」を経験する≫≪業務の中でできるプレパレーションツールを作成する≫ことなどが示された。以上より、看護師がプレパレーションを実施しやすい環境が整うことで実施率があがり、さらに「成功体験」から自信が生まれると考えた。 そこで本研究では、子どもにとって苦痛の強いMRI検査に着目し、子どもの対処能力を高められるようなツールを臨床看護師と共同で開発し、当ツールを用いたプレパレーション効果を検証するため40組の親子・病棟看護師・検査室看護師に調査を行い、さらにプレパレーションの普及効果を検証するため小児病棟の看護師31名にも調査を行った。当該年度は引き続きデータを収集するとともに、データの解析を行った。現在、研究知見の一般化に向けた提言を検討し、報告書としてまとめている。 本研究意義としては、検査を受ける子どもへのプレパレーションツールが整うことで、看護師の実施率が向上し、看護師自身の「成功体験」から自信が生まれる。すなわち、プレパレーションのさらなる普及に向けたシステムの構築に寄与し、子どもの心理的混乱の軽減や生涯にわたる健康観の育成、さらには小児看護の専門性の向上が期待される。
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