研究課題/領域番号 |
25463516
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内藤 茂幸 北里大学, 看護学部, 助教 (20406961)
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研究分担者 |
大塚 香 北里大学, 大学病院, 小児専門看護師 (30349865)
岡崎 章 拓殖大学, 工学部, 教授 (40244975)
小島 ひで子 北里大学, 看護学部, 教授 (50433719)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児看護 / プレパレーション |
研究概要 |
プレパレーションツールは子どもに処置や検査を分かりやすく伝える際に使用するものであり,中でも絵本・パンフレットなど子どもの視覚に訴えるツール(以下,視覚ツール)を使用する頻度は高い.H25年度はそれらが持つ構成要素を明らかにすることに焦点を当てた. 既存の文献より視覚ツールとの関連が読み取れるものを選定し,その中で視覚ツールの構成要素に関する記述を抜き出し質的に分析した.これにより視覚ツールが持つ構成要素として【『どのように?』への説明】【『どうして?』への説明】【頑張る内容の提示】【適切な所要時間】【興味を惹く工夫】【やる気の喚起】【自分のこととして捉える工夫】【理解しやすい文章】【視覚を活用したイメージ付け】【使いやすさ】の10件が得られた.視覚ツールの使用は幼児期後期が中心であり,この時期は事象の関連付けや論理的思考に乏しい.今回得られた視覚ツールの構成要素はいずれも,そのような対象者にとって必要な内容であると考えれ,視覚ツール作製時の有用なガイドラインとしてこの結果が活用できることが示唆された. また,視覚ツールは適切に使用されることでさらに説明の質が向上すると言える.そこで,当初の予定に追加し,視覚ツールを使用した説明を行う際の,看護師の実践内容を構成している要素も合わせて明らかにした.視覚ツールの構成要素を抽出した手順同様に,関連文献の記述を対象に質的分析を行った.その結果,視覚ツールを使用する際の実践を構成している要素として【適切なタイミング】【適した場所の確保】【個別性への配慮】【保護者と協働】【所要時間への配慮】【興味を引く表現】【わかりやすい話し方】【感情表出の推奨】【肯定的な感情を促進】【評価的な視点】【継続した介入】の11件が得られた.視覚ツールを使用する際の説明は,これらの要素を組み入れることでさらに質を向上させる可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4カ年計画であり,大きく分けて以下の内容で構成されている. 【質の高いツールに必要な構成要素を明らかにする】 1.子どもに対して効果的な説明ができるプレパレーションツール(視覚ツール)が持つ構成要素を抽出する(H25年度) 2.抽出された各構成要素の項目に関して,『rami』(評価対象項目に対して用意された数値を選ぶことなく,人の曖昧な評価を可視化・定量化できるパソコン上で稼働するソフトウエア)を用いて重み付け(重要度の査定)および評点化を実施し,得られた結果については公開をする(H26年度) 【ウェブサイトを活用した効果的なツール蓄積・提供システムの提供】 3.利用者がウェブ上でのプレパレーションツール蓄積・提供に求める内容を分析し,サイトの構成要素に反映させる.サイトデザイン・構成については感性デザインの知見を踏まえ検討を行う(H27年度) 4.ウェブサイトの一般公開・評価(H28年度) 当初の計画ではH25年度にプレパレーションツールの構成要素を明らかにするため,看護師に対するインタビューも予定されていたが,当該年度に実施した文献による検討によって目的の結果を得ることができたため実施していない。その他,計画に基づき予定通りの実施ができており,進捗状況としては特に問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は研究計画に基づき,抽出された視覚ツールが持つ各構成要素の項目に関して重み付け(重要度の査定)を実施していく予定である.加えて,視覚ツールそのものの質と,それをどのように用いるのかという実践の質の両面において向上させることが重要であると考えたため,視覚ツールを用いた実践が持つ構成要素の各項目についても同様に重み付けを実施する. 評価は小児看護領域において,実際に子どもへの説明に携わっている専門家(小児専門看護師,チャイルドライフスペシャリスト等)へ依頼をしていく予定である.『rami』による視覚ツールおよび,視覚ツールを用いた実践の各構成要素項目の評点化を中心に実施し,複数回に及ぶ調査を繰り返す.2回目以降の調査では,その前に行われた調査結果を評価者へフィードバックするプロセスを経た上で実施されることで,確度の高い重み付けの結果を得られると考えている.評点化された重み付けの値が大きい項目は,質の高いツールに優先的に盛り込むべき内容であり,各施設でのツール作製の際の足がかりとしてもらうべく,サイト上で一般公開する予定である. 本研究で得られる結果は,小児看護領域における子どものストレス軽減に繋がり得るものである.そのため,本研究の意義を念頭に実施計画にとらわれずに可能な限り前倒しでの実施に向け取り組んでいきたいと考える.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった統計処理ソフトについては,分析方法の変更に伴い購入していない.学会参加として旅費を設定していたが,他の方法で必要な情報を獲得できたため未使用となった,また,人件費についても研究組織内の人員で作業を進めることができたため発生していない.なお,研究分担者3名のうち,2名は分担金を次年度へ繰り越しているためその金額が次年度使用額に含まれている. 次年度はウェブサイトの作製や運営を予定しているため,それに係る費用として使用する.また,ウェブサイトから提供されるコンテンツをタブレット型コンピューターを使用して臨床の患者へ提供する予定であるが,コンピューターの提供数を増やすことで,患者の使用機会を増大させることができるため,その費用として使用する.
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