研究課題/領域番号 |
25463529
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
齋藤 英子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (90375618)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 母乳哺育 / 親子相互作用 / 看護介入プログラム |
研究実績の概要 |
平成26年度は、看護介入プログラムの実用化に向けて、【研究1】直接哺乳が困難な子どもとその親への看護実践に関するデータ収集と分析を行った。今年度も多様な場所で就労経験のある経験10年以上の熟練助産師5名から研究参加同意を得てインタビューや質問紙を用いたデータ収集を行い、地域で母乳哺育支援活動をする専門家と討議をしながら段階的に質的分析を進めている。現時点の結果では、助産師らは、直接哺乳が困難となっている原因を細やかに観察して多側面から捉えるも問題解決は焦らず、まずは精神的に追い詰められ自信をなくしている母親の心情に寄り添っていた。理想論や過去の経験ではなく目の前の母親にとってよりよい方法を支持していた。また、早産児への看護経験の有無や育児期の母親へ母乳哺育支援経験の有無という助産師自身の経験値により、その子どもの哺乳行動や能力の特性や獲得の見込みへの捉え方、母親の心理や家族の支援に関する考え方や実践について特徴が認められた。概ね、困難事例に対する熟練した助産師の実践知が多く見出されている。引き続き分析を重ねる予定である。 また、プログラムの一部を成すNBOの日本への導入に関しても国内外の専門家らと検討した。平成26年6月にICM(プラハ)、7月に14th WAIMH(エジンバラ)へ参加し、新生児行動学の専門家らと意見交換をした。欧米をはじめとする多くの国では、すでに医師・看護職者や臨床心理士が新生児行動学的な視点から親子介入ができるNBOを導入しており、母親の心理学的な指標の改善、親子間の相互作用の促進等、改めてその効果を確認するとともに、様々な国での導入・実用例について知ることができ、多くの示唆を得た。【研究2】Late Preterm infantの出生後3ヵ月間の哺乳状況や母親の母乳哺育経験は文献収集・整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究1】は、現在、地域で母乳哺育支援活動をする専門家と討議をしながら段階的に質的分析を進めている。データの飽和化が認められはじめており、参加同意は得られたが出産、家庭の事情等によりインタビューを延期している3名(夏にはデータ収集予定)でデータ収集を終える予定である。【研究2】は、現在、文献検討を終えて大学や病院の倫理審査に向けた資料を作成中である。主たる原因は【研究1】と【研究2】を同時に進めることの難しさであったが、平成26年度は、意見交換をしたい専門家が集う国際学会が2つ開催され、予想以上に様々な方々と交流が図る機会を得られた。これらは実用化に向けた意見をいただける貴重な機会であったため、平成27年度に実施予定であった本看護介入プログラムの実用化に関する国内外の専門家からの意見聴取を先んじて実施したことになる。ICMでは各国の助産師が多く参加しており文化的背景を考慮しながら母乳哺育支援や家族支援に関する討議を行えた。さらに、英国の大学の助産に関する研究の指導者とも知り合え、その後も意見交換を重ねた末、本プログラムの実用化に関連する論文を公表するに至った。WAIMHでは欧米の新生児行動学の専門家と一緒にポスターワークショップを行う機会だけでなくプレコングレスのポスターラウンドにも参加することになり、様々な場所で実用化や日本の状況を含めた意見交換を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、【研究1】の最終分析を9月には終えて、研究成果は平成27年3月に日本で開催する19thEAFONSにて発表し投稿する予定である。【研究2】のデータ収集に際しては、1施設の内諾を得ているが、短期間にデータを収集するために他に2~3施設の協力を得ることを考えている。研究補助者の支援も得ながら8~12月でデータを収集し、随時、分析を開始して2月にはデータ収集と分析を終え、国内外の学術誌へ投稿する予定である。また、11月にボストンで新生児行動学の専門家や各国で親子への早期介入の実用化を推進する指導者層が集う会議(ボストン/ブラゼルトン研究所主催NBAS/NBOトレーナー会議)へ出席し、日本における今後の導入や実用化にむけた意見交換と協力の要請をしていきたいと考えている。平成25/26年度と本研究を遂行する過程で、今後のプログラムの実用化に向けた協力者や理解者を国内外で多く得られることができている。今後もその方々の協力を得て連携しながら実用化に向けた準備をさらに進めていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に【研究2】のデータ収集・分析まで至らなかったため、データ収集時にかかる旅費や郵送費、研究補助者雇用の人件費、データ入力に係る費用を使うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、複数施設で【研究2】のデータ収集を行う予定である。計画としては、7月から研究補助者を雇用してデータ収集を開始するため、人件費、旅費や郵送費を使用する。また、同時にデータ収集も開始となる。所定の業者へデータ入力に係る費用を使用する予定である。また、【研究1】で収集した音声のデータ化も引き続き業者へ依頼していくため、テープ起こし費用を今年度も使用していく予定である。
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