研究課題/領域番号 |
25463532
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
西川 みゆき 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (50457941)
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研究分担者 |
鮫島 輝美 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (60326303)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 母児インタラクション / 腹部触診法 / 母児・家族関係育成のケアモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,状況の中に埋め込まれた助産師の「触れる」ことの医療的・社会的意味を明らかにし,妊娠期からの母児・家族関係の育成支援に向けたダイナミックなケアモデルを開発することである。 平成26年度は,a)文献検討,b)インタビュー調査:平成26年10月~平成27年2月,妊婦1名,助産師3名,c)フィールドワーク:平成同年同月,妊婦宅および助産院出向き,フィールドノートを作成,内容をデータ化し,以下のような分析の視点が示唆された。 助産師が妊婦に触れ,妊婦の身体と児の存在を密接に関連づけることで,「未だ見ぬ児」の存在を,まずは妊婦が実感として感じ始めていた。助産師が触れることを通じて,児が描き出されていく中で,この関係性が今度は,自己の身体感覚としての「児との一体感」を生み出していた。助産師は,「助産師‐児」との関係性を妊婦の前で演じることによって,「あたかも見える存在」としての児を炙り出し,さらに児の動きと連動させた「言葉」を添えていくことで,「未だ見ぬ胎児」の存在だったわが子に,「助産師‐児」との関係をモデルとして示し,児の胎内の位置や様子を説明する翻訳者となっていた。さらに,助産師と同じように妊婦が胎児との関係を書き写し,次の機会である「妊婦‐児」の2者関係で,より豊かに再現することで,母児関係を親密で強固なものにしていた。 家族が妊婦のお腹の変化を通じて,胎児へと関心が広がり,妊婦と家族の関係性が変化することによって,胎児の関係が肯定的に作られていた。また,職場の肯定的な働きかけが,妊婦にとって自ら変化していく身体を受け入れ,待ち遠しい存在として受け入れられた環境を創出していた。 以上から,助産師の触れながら胎児の存在を実感あるものとして描き出すことを通じて,連鎖的にすべての関係性が変化・再構築され,「未だ見ぬ胎児」をやがて家族として迎え入れる準備がされていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,インタビュー調査やフィールドワークができ,そこから前述のような分析の示唆を得ることができた。研究協力者として4人の地域で活動する助産師と,現在も連携を保ちながらフィールドワークを行っている。また,H27年度の方向性と調査計画も進行しており,前半は助産師を中心とした分析と文献検討を中心に行い,中盤には助産師や妊婦,研究者とのディスカッションの場を設け,助産師と妊婦の相互行為の意味付けを豊かにする。後半からは,調査結果およびディスカッションから得た意味を加え,まとめる作業を考えている。また同時に,学会発表を行い,論文にまとめていくことも平行して行えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の母児インタラクションの構造をふまえて,今年度の調査で明らかにしたいことは,助産師や妊婦,研究者とのディスカッションの場から,助産師と妊婦の相互行為の意味付けを豊かにすることである。さらに,研究会を開催し,「状況論的アプローチ」に興味をもつ研究者とともに研究会を行い,本研究の目的に適った研究者を講師として招き,目的達成のために必要な高度な知識の習得や理論精緻化への基礎を固める。最終目標である,妊娠期からの母児関係の育成支援に向けたケアモデルの開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度もデータ収集に関わる出張先が、通勤定期圏内であったことから、当初の予定よりも出張費の支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、文献検討に使用する書籍の購入、研究会開催に関わる経費及び講師謝礼、研究発表に関わる印刷経費・出張費・学会参加費を予定している。
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