研究課題/領域番号 |
25463534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
鈴井 江三子 兵庫医療大学, 看護学部, 教授 (20289218)
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研究分担者 |
大橋 一友 大阪大学, 医学研究科, 教授 (30203897)
中山 芳一 岡山大学, キャリア開発センター, 助教 (40595469)
飯尾 祐加 兵庫医療大学, 看護学部, 助教 (70454791)
斉藤 雅子 兵庫医療大学, 看護学部, 准教授 (80511617)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学童保育 / 指導員 / 児童虐待 / 早期発見 / 対応 / 被害児童の特徴 / 加害者の特徴 |
研究概要 |
平成25年度は岡山県と兵庫県において,過去1年間に児童虐待を発見した指導員を対象に,児童虐待徴候とその対応について聞き取り調査を実施した。調査への協力が得られた調査対象者は21名(女性18人、男性3人)であり、平均年齢は45.6±8.4歳、平均学童保育経験年数は13.5±5.9年であった。資格の有無は有資格者16人,無資格者5人であった。 その結果、1.児童虐待の実態、2.被害児童の特徴、3.加害者の特徴、及び4.学童保育指導員が行った対応が明らかになった。 1.児童虐待の実態として、児童虐待を受けた子どもは兄弟や姉妹を含めて男児11事例,女児10事例であった。.2.被害児童の特徴として、入所時の子どもが表出した言動は(1)顔の表情、(2)行動、(3)友達との関係性、(4)指導員との関係性、(5)衣服等、(6)清潔面、(7)食事のとり方、(8)身体の状態の8つのカテゴリーに分けることができた。 一方、3.加害者の特徴として、児童虐待の加害者となった親は実父母9件、実父+継母1件、一人親7件(母親のみ6件、父親のみ2件)であり、両親のそろっている家庭が一人親よりも若干多かった。児童虐待をした加害者は、実父母がいる場合は実父が暴力を奮い、実母もそれに追随する傾向にあった。また、同居している祖父母の存在は児童虐待の抑止力にならない場合も多かった。 4.指導員が行った対応として、(1)被害児童である子どもへの対応、(2)他の入所児童への対応、(3)親への対応、(4)学校・関連機関への対応の4つのカテゴリーに分けることができた。なかでも、子どもへの対応として、子どもの生き抜く力を培うために暴力を受ける状況を考えさせて、その状況を繰り返さないように指導し、自分で家事もできるように練習をさせていた。しかし、児童虐待を疑いながらも関連機関との情報交換がスムーズに取れていないことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していたように、岡山県と兵庫県の両県において、過去1年間に児童虐待を発見した経験を有する指導員を対象に聞き取り調査を行い、被害児童の特徴、加害者の特徴、指導員の対応、他機関との連携の実態について明らかにすることができた。 その結果、被害児童の言動は学童保育の入所時から他の児童とは違った言動をとるという特徴があり、この特徴を指導員が認識することで児童虐待の早期発見につながるとの示唆を得た。また、指導員の関わりとしては、子ども自身の生き抜く力を育てる関わりが明らかとなり、学童保育の役割を明確化するうえでも意義深い結果であったと考える。さらに、児童虐待を発見した指導員の対応としては、被害児童への対応だけではなく、他の入所児童への説明や保護、保護者へのアプローチ、また学校との密な連携の必要性等、4つの視点を有した関係構築が必要であることも明らかになった。一方、最も重要であるはずの学校との連携がシステムとしては構築されておらず、指導員個人レベルの関わりにとどまっていることが早期発見と対応を遅らせる要因でもあった。 そして、上記の明らかになった研究成果を基に、国際学会と国内学会において、学童保育における児童虐待の実態とその対応に関する発表を行った。 以上のことから、本研究は当初の研究計画に沿った実施が概ねできていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は介入群である岡山県の学童保育指導員を対象に、学童保育における児童虐待の早期発見と早期対応に関する研修会を実施する予定である。研修会では、平成25年度の研究成果を基にした「学童保育における児童虐待早期発見・対応マニュアル」(案)を作成し、それを用いて研修会を企画する予定である。 現在のところ岡山県と兵庫県の両県に在する学童保育連絡協議内事務局との連携も密であり、研修会の準備も順調に進捗中である。今後の研究の推進方策として、研修会にはより多くの指導員の研修参加が望まれるために、学童保育連絡協議会からの参加呼びかけだけでなく、行政の担当窓口との連携もとり、行政からの呼びかけも実施していきたいと考えている。また、平成25年度の調査結果の内容を参考にした、学童保育指導員による児童虐待の早期発見と早期対応に関するマニュアル作成にも着手する予定である。加えて、学童保育における子どもや家族へのサポート体制が充実しているアデレード州において調査を行い、よりサポートシステムの充実した運営の在り方や関連機関との連携の方法も明らかにし、日本における学童保育の活動内容を考察したいと考える。アデレード州における調査は参与観察と聞き取り調査を予定しているため、アデレード大学看護学部教員からの協力を得ながら進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に計画していたアデレード州における学童保育施設での現地調査が、大学業務の都合上実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 平成25年度に実施できなかった現地調査を、平成26年5月末から6月半ばにかけて実施予定のため、その費用として使用予定である。
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