本研究は妊娠中の快・不快体験が分娩期・育児期に及ぼす影響を明らかにし、妊娠期のケアの在り方を検討するためのエビデンスを見出すことを目的としている。そのため、妊娠期の横断調査(調査A)と、妊娠期から産後1年までの縦断調査(調査B)を実施した。 最終年度である本年度に至るまでには、所属大学の倫理委員会の改変、自身の異動などにより当初の計画から遅れることもあった。しかし、研究協力施設からのサポートや臨時要員の採用により、本年度3月に、縦断調査(調査B)も終了することができた。最終的な対象者数は当初の予定を下回ったものの、全5回の縦断調査のうち2回目以降は比較的脱落率も低く、70名(回収率90%以上)の協力を得ることができた。現在これらデータを解析しつつ、並行して国際学会での発表を終えた横断調査(調査A)について執筆している。 また、本年度は妊娠21週までの胎児に関するさまざまな不確実性を持つ時期、かつ、つわり等のマイナートラブルの多い時期を対象に妊婦の心理状態を検討し、2017年の国際学会への発表を準備した。本分析からは健診間隔が広い時期ゆえに、妊娠に対する周囲の祝福やサポート、上の子への配慮の重要性が確認された。また、マイナートラブルへの対処法に関する十分な情報提供の必要性が示された。さらに、まだ実感のない女性や不安のある女性がいる一方で、自己の成長に向け意識が前向きになっている女性たちもいることが示された。これらを踏まえ、今後は保健指導や健診のあり方の検討が、その後の妊娠分娩育児期間をサポートする上で重要な援助になるという、次の研究への足掛かりを得ることができた。
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