研究課題
急性期病院において、認知症高齢者の入院は増加傾向にある。認知症高齢者の場合、入院初期に新しい環境に適応することが困難で、認知症の行動・心理症状(BPSD)が起こりやすく、入院中の転倒事故や医療事故のリスクも問題となっている。そこで本研究では、急性期病院における認知症高齢者対応型実践能力の向上を目指した教育プログラムを構築することを目的とした。急性期病院に勤務する看護師のインタビュー・データから、認知症高齢者の看護体験における認識・対応を抽出し、質的帰納的分析を行った。急性期で認知症高齢者を看護する場合、中核カテゴリーとして「急性期からの離脱」が優先すべき課題であり、主要なカテゴリーとして「『認知』の仮診断」「常に意識下にある存在」「見守りの相互協力」「認知症対応への切り替え」「踏み込んだ働きかけ」「ハプニングを楽しむことへの転換」を抽出した。これらのカテゴリーを検討し、急性期看護の現状に合った教育内容として、①急性期を早期に離脱するためのアセスメント能力(「『認知』の仮診断」)、②見守りのための看護師間のチームを形成、連携する能力「「見守りの相互協力」「認知症対応への切り替え」)、③看護師としての自律性(「踏み込んだ働きかけ」)を高めることが必要であることが示唆された。また、認知症に対する認識を肯定的に転換することも必要とされており(「ハプニングを楽しむことへの転換」)、葛藤の回避や仕事上のストレス緩和、スタッフ間の情報共有を促進していることから、看護実践能力となる可能性があることが示された。認知症高齢者対応型実践能力を教育プログラムとして展開するうえで、今後の展開として高齢者側の評価、倫理的な視点も不可欠であるため更なる検討が求められる。
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日本転倒予防学会誌
巻: 2 ページ: 9-18