研究課題/領域番号 |
25463546
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松波 美紀 岐阜大学, 医学部, 教授 (40252150)
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研究分担者 |
温水 理佳 岐阜大学, 医学部, 助教 (90402164)
吉川 美保 岐阜大学, 医学部, 助教 (80444248)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症高齢者 / チームケア / 持てる力 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
平成25年に老年看護学専攻の大学教員と、一般病院Aで勤務する認知症看護認定看護師と、認知症ケアに関心の高い病棟看護師の代表で、アクションリサーチのグループを結成し、平成26年度までに18回、平成27年度は12回(月1回開催)の事例検討を重ねてきた。 事例検討は、病棟看護師の認知症高齢者への関わりがうまくいった事例、あるいはうまくいかなかった事例を取り上げ勧めている。事例の概要、出来事の紹介に加え、看護師の関わり場面については、患者の言動とその時対応した看護師が考えたこと、看護師の言動等を振り返り、場面の再構成を行っている。また、その時同じく勤務していた看護師の考えや言動についても確認し、出来事をできるだけ正しく再現し分析材料としている。 対応がうまくいった場面を分析すると、看護師は患者の“持てる力”に注目し、チームで共有できるような働きかけをしていた。また、当たり前と思われるケアをしっかりと実施していた。対応がうまくいかず、混乱が起きていた場面には、認知症高齢者との関わり方に課題のある看護師が存在していた。そのような看護師をどうチームの中で引き入れていくかが,認知症高齢者へのチームケアには重要なことと認識した。また、入院時より認知症を有していることを認識していても、入院直後から数日間患者の言動に振り回されてしまうことがある。その場面を振り返ると、「こう関わればよかった」とを考えられるにもかかわらず、入院直後は対応できないことも明らかになった。患者の発言を「傾聴する」という行為の質的問題が影響していることも示唆された。 このような事例検討で明らかになったことに対して、ケア方法の改善点も明らかにしながら取り組んでいるので、各病棟で少しずつではあるが、看護師の姿勢等に変化が出てきていることを実感している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度もA病院との事例検討会は、定期的に実施し、病棟看護師のケアにも変化が出てきていると実感している。その成果報告会も兼ね、県内の病院で働く看護師の参加してもらう事例検討会を開催した。当日は県内の認知症看護認定看護師を含め、70名ほどの看護師の参加があった。 A病院の看護師等との事例検討会で取り上げ、当たり前のことをしっかり実施することで対応に変化を及ぼすことができた事例のうち3例を紹介し、意見交換を行った。A病院だけの事情の中での検討されてきたことが、多くの視点から、幅を広げ考える機会をもちたいという試みは達成できた。しかし、参加する看護師の認知症看護に関する関心はさまざまであり、認知症に関する知識や関わり方の享受を求めるものから、日常の対応困難例について新しい方法論が報告されることを期待合していたものもいた。この研究テーマは、チームでの対応のあり方を考えたいものであり、当たり前のことをしっかり実施することの重要性を伝えている成果が、成果として十分に伝えるには至らなかった。 事例検討会の繰り返しで、A病院の病棟看護師のケアは変化してきた。その成果報告の方法については、検討をしなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
医療現場における認知症ケアについて、病棟の看護師とともに考えてきた。その中で、家族に面会や付き添いを依頼するなど、看護師にとって家族との関わりは重要なものである。逆に家族にとって、医療現場に行くこと、看護師の関わりはどのように受け止められているのか、認知症の当事者である患者や家族が医療を受けるにあたって、どのようなニーズをもっているのか、把握していくことも重要であることが示唆されてきている。そこで、平成28年度は、認知症を有する高齢者を抱える家族との意見交換も活動の一つに含めていきたいと考えている。 アクションリサーチの効果的な報告方法についての検討をし、発表をしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の予定額は使用したが、平成26年度の繰越額がそのまま残っている。平成26年度の学会開催が近県であったため、旅費の負担が軽かったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、県内で働く看護師を交えての事例検討会を開催し、アクションリサーチの成果を報告していく。また、医療を受ける立場にある認知症高齢者を抱える家族との意見交換会を行い、その内容を認知症看護ケアに活かせるようにする。 完成年度でもあるので、成果発表の準備をする。
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