研究課題
統合失調症をはじめとする慢性の精神疾患の効果的な治療は、患者本人が疾病を自己管理する技術の習得や家族の疾患への理解が含まれ,心理教育の効果が期待されている。IMRは,精神障害者を対象としたリカバリー志向の科学的根拠(EBP)に基づく実践プログラムである。またFPEも精神障害者を抱える家族を対象にしたリカバリー志向に基づいた実践プログラムである。本研究は,地域で暮らす当事者本人にIMRとその当事者家族にFPEプログラムの双方向心理教育の実践による家族機能の効果促進要因を明らかにすることである。その結果,当事者の【言葉と行動のつながり】,【日常生活の変化】,【前向きな言動】の要因と家族の【コミュニケーションの拡がり】,【関心の変化】の要因に双方向の影響傾向がみられた。また,2年間のIMRに参加した1事例のリカバリーのプロセスからは,【疾患の理解】と【服薬との折り合い】,【対処を選択できるようにグループで語り合える】ことが【希望】に向かってエンパワーされていた。またリカバリーゴールに進むにつれ,自身の生活は自身で責任をとらなければと【自覚・自信や楽しみ】が芽生え,【生活に有意義な役割】を持てるようになった。また,将来への夢や希望を描く変化は,自らが自身で行動し変化させて行くための大きな動機づけになっていた。地域におけるリカバリー志向の支援のありかたでは,当事者らがIMRで生じた自らの生き方やニーズ,生活への希望についていつでも相談しやすく,継続した支援が得られやすい。専門職は,IMRやFPEで共有した当事者・家族との関係作りを相談支援に活かす継続した専門的支援を提供しやすい特性を持つ。当事者と支援者が協働してリカバリーのプロセスを共に歩む中で,自らを変化させるストレングスや本来の健康的な力をエンパワメントできると考えられる。
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関東学院大学看護学会誌
巻: 3(1) ページ: 8-15
日本病院・地域精神医学
巻: 57(3) ページ: 272-275