本研究は,精神疾患が疑われる高校生への早期介入に向けて,養護教諭の支援の実際,および医療との連携支援の現状と課題を明らかにし,より効果的な支援のあり方を検討することを目的とした. 平成25年度から26年度は,精神疾患が疑われる高校生に対する養護教諭の連携支援の実態と課題を明らかにするために,中部地方の公立高等学校651校に勤務する養護教諭を対象に自記式質問紙調査を実施し,データの分析,論文作成,研究成果の発表を行った.平成27年度は,精神疾患が疑われる高校生に対する養護教諭の援助方法を明らかにし,早期介入に向けた連携支援のあり方を検討するために,研究協力への同意が得られた高等学校の養護教諭8名を対象に半構成的インタビューを実施した.最終年度の平成28年度は,インタビューで得られたデータを分析し,論文作成,研究成果の発表を行った. 以上の研究期間全体を通じて得られた研究成果は以下のとおりである. (1)養護教諭の約6割が精神疾患やその疑いのある高校生を継続的に支援していた.支援事例のうち医療機関との連携支援が行われていたものは約4割であったが,1,2年生の事例では約6割が進級を,3年生の事例では約8割が卒業をしていた.精神の不調をより早期に発見し,適切な医療と支援が受けられる環境を提供できれば,学校生活を継続できる可能性が高いと考えられる. (2)精神疾患が疑われる高校生への連携支援における課題には,生徒本人や家族からの理解・協力を得ることの難しさ,精神科に対する抵抗感,学校側と医療機関側相互の理解不足や方針のずれ,専門職による仲介の必要性などがあげられていた.それぞれの専門性を活かした連携支援とそのための地域ネットワークづくり,教育現場の実践に合致した施策や学校側のニーズに対応できるアウトリーチ型支援の体制づくりが今後の課題である.
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